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午前中のセッションで、ヴィトゲンシュタインの言葉を申し上げたわけですが、私の言語の限定というのは、私の世界の限定なのです。つまり、1つの言語を無邪気に学んで、1つの言語だけでやっていくことはできないといったのです。アメリカの英語、コンサルタントの言語、哲学、ポップカルチャー、マスメディアの言語、ファッションの言語それぞれが、あなたの考え方、精神に影響を与えるのであり、自分の言葉と同じぐらい、1つの巨大な影響を与えてしまうのです。

だから、ヨーロッパの文化研究所では、こういうものに対して戦っていかなければいけない。これは、ゲーテ・インステチュートもそうです。フランセ・インステチュート、ダンテアルギエリ、イタリアの研究所もそうです。ブリティッシュ・カウンシルでさえも、もはやブリティッシュイングリッシュというのは存在しないと思っているわけです。フランス語は全世界の言語として維持することができなくなった。あるいは、スペイン語も世界の言語として維持できなくなった。ドイツ語もそうでなくなった。そういう時代は終わったわけです。存続の危機に直面すると思います。

特に、アメリカ英語は全世界からいろいろな言葉が入ろうとしている。英語の辞書をみると、毎年毎年、訂正しているわけです。アメリカとかイギリスから来ている言葉ではなくて、ピジョン・イングリッシュとか、全世界のいろいろな言葉が英語の方に入ってくるようになっている。こうして、辞書を直さなければいけない。ヤルマン先生もおっしゃったとおり、1つの言葉しかもっていないとしたならば、言語に関する普遍的な対話というものを行っていくことはできなくなるわけです。ですから、各国の言語、特殊な言葉、イデオマティックに戻って、少なくとも2つの精神的な文化――自分の国のものとグローバルカルチャーの両方の中で生活しなければいけないと思います。

 

○モデレーター リム先生、どうぞ。

 

○リム 我々は、もちろん、言語でもほかの問題でも、非常にプルラリスティックにみていくのが必要なのではないかと思います。1つだけの解決策というのはないと思います。いろいろな問題が並行して発生するわけで、そういう中で解決策を求めていくわけです。今おっしゃったように、いろいろな言葉を一緒に学ぼうということですけれども、これは、いろいろな社会的な環境の中でやれないことでもないわけです。イギリス系、アメリカ系英語というものがいろいろと使われるようになりまして、それが非常にファジーな国際的な言語になってきているわけです。そういう意味において、自分たちの言葉を失ってしまった人たちというのは、イギリス人とアメリカ人ではないかと思います。どのような形で自分たちの言葉が変えられてしまったのかということを考えながら、自分たちの英語を使っていくことになるのでしょう。また、ほかの言語文化から来た変わった英語というものも理解していかなければならないという状況が出てくるのでしょう。

 

 

 

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