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それはこうしたグローバル化に危機感を抱き、やはりシンガポールの文化的アイデンティティをいかに確立するかという課題が大きく出てきたからでしょう。ですから、沖縄サミットで初めて文化の問題がアジェンダの一つの項目として入って、「文化の多様性」を守るということが先進G7の国々の首脳の間で一致決議されたことは、画期的な事柄だと思いますが、これもやはりグローバリゼーションの現象の中で出てきた動きなのです。つまり、グローバル化はローカル化をいわばプロモートする側面があることに注意すべきでしょう。

グローバル化という現象のもとで、世界のどこにおいてもローカルな変容を遂げざるを得ないという側面は、日本でもこの約10年間、非常に強烈に経験されたことだと思います。国際化という言葉が80年代に叫ばれ、90年代にはグローバル化という言葉が、日本のバブルエコノミーの崩壊の後で非常に強力に唱えられるようになったことは事実です。

日本の場合、1970年代にアメリカ系ファストフード、例えばマクドナルド、ケンタッキー・フライドチキンなどが参入してきて、80年代から現在まで日本の軽食産業を支配してきたといえます。同時に、70年代の初めごろから日本的なファストフードである吉野屋の牛どん、ラーメン、回転寿司といったものがグローバル化の中で成長し、今やアジアや欧米諸国のどこへ行っても回転寿司やラーメン、吉野家の牛どんの店がみられるようになりました。こうして、軽食産業においてもグローバル化の中で、日本のローカルなものがグローバル化していく現象がみられるようになりました。ディズニーのアニメ映画を戦後熱狂して観た日本から発信された「ポケモン」が、アメリカをはじめ世界中で熱狂的なファンに迎えられているわけです。

IT革命といわれていますが、ソフトウェア、マイクロチップス等々、アメリカで製品化され世界で売られているいろいろなIT製品の部品やソフトの大部分は、インドや台湾で製造されているわけで、グローバル化というのは、近代化、西洋化と違って非常に多元的なレベルで起こっている現象でもあります。電子ネットワークについては、情報がそれこそグローバルに飛び交う世界ですが、これもやはり一つの中心というのがなくなって、いわば多中心の世界になっている。これがグローバル化とよばれる現象の非常に大きな特徴であります。

情報通信では、ゴア副大統領が提唱した情報スーパーハイウエーなど、最初はアメリカが中心になって90年代は圧倒的に先行し成果をあげましたが、21世紀はインドやシンガポールや日本なども成果をあげることが予想されますから、やはり中心はさまざまなところに移ってきている。だから、多元的なプレーヤーが多中心的なところから情報を発して、それで情報通信のインフラとソフトを開発して発展させるという現象が起こってくるでしょう。これは、恐らく20世紀の終わりにあらわれた21世紀的現象の予兆であって、世界の発信源が、アメリカや旧ソビエトから、アジアやほかの地域にも移っていくという、多中心的時代の始まりをグローバリゼーションとよばれる現象が告げているのだと思います。

 

 

 

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