そんなことで国民の生活が守れるのかと疑問です。何でも自由化して、何でもいいかというわけにはいかないというのは、カリフォルニアの電力自由化が最もいい勉強になると思うのです。
そういう意味でいくと、米国モデルへの逆風というのがあります。今のITがうまくいかなくなっているというのは、90年代のインターネット上の試みは、話をおもしろくするために大げさなことをいうと、米国のビジネスモデルは全部失敗です。例えば、ドットコムビジネス全般で、例えば今月だけでも 210社が廃業しているのです。向こうでもほとんど詐欺みたいだといわれています。ウェブの利用時間は減少しています。これは当たり前なのですけれども、やってみるとわかりますが、米国でもろくな情報を出していません。伸びているのといったら、くだらないポルノ関係とか怪しげなやつはどんどん伸びているのですけれども、やはり、真っ当なものでおもしろくないものなどは、なかなかいかないですから。最初はおもしろいといってやったのですけれども、どんどん使われる量が減ってきます。それから、パソコンの売れ行きはさっきも言いましたように低迷しています。PCが過半数の家庭に普及した上に、企業向けも十分あるということになると、これ以上売れなくなってきています。
あと、広告に頼った無料サービス、無料ニュースサイト、無料プロバイダ、無料パソコンというのは経済原則に乗りませんから、こんなもの、おもしろいと思ってやって、ITが重要だなどといっても、絶対にこんなものは失敗するのです。最初から失敗だとみんなわかっていたのにやったのです。結局どうなったかというと、投資したそういうところは、みんな株式を上場させるといって、株主からお金を集めて逃げてしまうのです。つぶれておしまいという感じです。簡単に言えば、人の通らない道路を引くようなものですから、こんなものは成功するわけはないのです。幾らITが重要だからといっても、ただで全部やってうまくやっていくなんて、どうやってそのお金を取り戻すのかが、私には理解できない。とまあ、米国の悪口を言っているのですが、そうは言っても、米国というのはいい国なのです。壮大な実験国でして、誰もやっていないことを率先して試みます。これをやるのはアメリカですから、いいですよね。一時混乱は生じるのですけれども、私がアメリカはすごい国だと思うのは、必ず立ち直ってよい結果を目指すし、変化が非常に早い国ですから、修正も早いのです。