このITと日本の対応ということなのですけれども、実は、今のITというのは、まさにインターネット部分で、これは米国から始まったものです。米国は、非常に戦略のある国でして、インターネットができたのも、別に志が高かったとかいうことではなくて、ほとんどが全部軍事研究から出てきているのです。30年ぐらい前からこれをやっているわけでして、ご存じのように、国の戦略イコール軍事戦略ですから、ITブームのもとになっているのはDARPAです。DARPAというのは、DODという国防総省の中にある、ARPAというアドバンス・リサーチ・プロジェクト・エージェンシーといわれている組織があるのですけれども、この国防省高等研究計画局というところが、1958年、ソビエトがスプートニクという人工衛星を世界で最初にやったのに対して、非常に焦って、年間その当時のお金で 3,000億円ぐらいを軍事研究にここ20、30年出し続けているわけです。今のコンピュータで押さえている技術というのは、全部そこから出ているのです。
ですから、マイクロソフトが別に今のパソコンをつくったわけではないし、日本はすごい勘違いしていますけれども、ベンチャービジネスなどというのは、そういう意味でいったら何の役にも立たないです。ベンチャーなどで最初からこんなものをつくるなどということはできないのです。あと、これも何回も言っているのですけれども、10代の若者は重要です。私も東大の教育者でもありますし、そういう若者を教育しなければいけません。けれども、これだけ進んでいる半導体とかマイクロプロセッサーサイエンスで、10代の子供が大学にも行かないで開発できるわけがありません。よく考えたら、そんなことは当たり前なのです。要するに、そうした技術は高等的な戦略のもとに出てくる。もう1つ、それをサポートしているのが、NSF、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションという、全米科学基金なのですが、これが両方でインターネットをつくるだけでも、日本円で10兆円以上のお金を投入している。
そういう軍事戦略でやったものを、さらにアメリカがすばらしいと思うのは、それを経済戦略に途中からとりかえるのです。そんなことが日本はできません。私は軍事研究がいいとはいいませんけれども、失敗が多くても許される研究費なのです。日本だと、当然ですけれども、軍事研究でないと、失敗すると何で失敗したということをいわれるわけです。ですが、軍事研究は、失敗してもわからないです。失敗しているのだか、うまくいっているのか、多分、研究を10個やったら、9個ぐらい失敗しているのです。