2番目に感じました点は、エクスペリメントなのですが、新しいOS、オペレーションシステムができても、これが成功するかしないかは、これをやってみないとわからない。とにかく実験をしてみよう、やってみよう。だめならもう1回やり直してみようという意欲が非常に強いということであります。向こうの経営では、会社によっていろいろ違いますが、80%主義ということをよくいうわけであります。日本の企業ですと、完璧主義ですから 100%に近い可能性がないとなかなか新しい仕事に手をつけないということですが、向こうでは80%の可能性があればやってみよう、エクスペリメントをしてみよう、リスクに挑戦をしてみようという意欲が非常に強いと感じております。
なぜこんなことを申し上げるかというと、シリコンバレー等々にありますような企業だけでなくて、今では、一般の在来産業もITを使ったプロダクティビティーの上昇というものに非常に力を入れて、なおかつそれに改善をしているということだろうと思います。ですから、先ほど公文先生の一時的というお話がございましたが、私は、確かにここでしばらく調整は続くだろうと思いますし、今までのバブル的なドットコム系の会社の調整は進むだろうと思いますが、経済全体としてみると、それほど落ち込まないで、ある程度のところでまた上昇に転ずるのではないかと私は思っております。それは社会全体が、あるいは産業全体がITを利用してプロダクティビティーを上げようという努力が非常に強いということであります。
もう1つ、経営で感じます点は、人のことであります。従業員をどのようにITの経営戦略に結びつけていくかということであります。私どもは、アメリカは景気がよくなれば人を雇って、景気が悪くなれば首にするということで、雇用調整をどんどんしやすくするということだと思いますし、現に80年代のアメリカはそうだったわけであります。実は、失業率が10%まで上がった時期がありましたけれども、最近のアメリカの企業は、IT革命以来、そこがかなり違ってきているように私は感じております。それはもちろん、まず従業員の知的能力をいかに高めるか。高めた労働者をいかに自分の会社に置いていくか。そのために、自分の会社の魅力を高めようという意見が非常に強いように思います。もう1つ、よく向こうでいわれる言葉が、エンプロイアビリティーとエンプロイメンタビリティーという言葉であります。エンプロイアビリティーというのは、労働者の雇用されやすい能力を高めていこうということでございまして、これはもちろん、自分の企業が構造改革をして別途の事業に行くときに、従業員がそれに対応できるような能力を常に絶えず高めていこうという戦略であります。