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そういったことを考えてみますと、IT革命といっても、実はいろいろな側面があるのだなと思わざるを得ません。

ごく手短かに申し上げていきますと、私たちは依然として、今、近代社会と呼ばれる社会に生きています。近代社会とは、専ら目標を実現するための手段、あるいはパワーといっていますが、そのパワーがどんどん増えていくプロセスであります。近代化の流れで、近代化そのものがこれから成熟に進みつつある。あるいは、物事の変化は、出現、突破、成熟という3つの局面を通って、成熟期にはオーバーシュートして、行き過ぎて、少し訂正が行われるという形で安定するだろうといった考え方に立って書いているわけですけれども、その近代化自体が、よくみると、実は3つの局面、初期の軍事化、主権国家が出現して、いわば公権、公優位の時代がまず近代社会には出てまいります。その次に、いわゆる産業革命を通じて、今度は近代的な企業が出現してきて、私優先、私有財産権が神聖視されるという流れが出てまいりまして、そして今、今度は第3のパワー、つまり情報の力―あるいは知の力といってもいいのですけれども―の増大が進みまして、それを担う新しい組織、これまでの国家や企業とは一味違う、通常、NGO、NPOという言葉で呼ばれている組織でありますけれども、そのメンバーである人々が増えてきつつある。これは多分、公と私に対して、いってみれば、その中間にある共、共の権利の主導する時代になるのかなと思います。

しかし、もちろん産業化が終わったわけではありません。

産業化は依然として進んでいますが、成熟局面に入っていて、第2次産業革命から第3次産業革命に移っています。その第3次産業革命がいよいよ出現から突破に入ろう、つまりその変化が加速しようとしているというのが21世紀初頭の特徴だろうと思います。

産業化というのは、別の言葉でいいますと機械化、機械を使う。それから商品化。あるいは最近の言葉でいうと、アウトソーシング、人にやってもらおう、人のつくったものを買う、あるいはお金を払ってつくらせる。こういう話です。それによって経済の効率を上げたわけですが、その機械化、商品化が第1次産業革命では、特に生産の面に入りました。工場で機械を使い、人を雇って働かせる、お金を払う、賃金労働者です。これが第2次産業革命では、機械は家庭に入ってまいります。乗用車とか家電製品という形で、我々はたくさんの機械を使うようになり、また、消費サービスを購入するようになった。

 

 

 

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