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こういう活動を強めております。一昨年11月、シアトルでは数万人の人々が集まって、WTOの閣僚会議を事実上粉砕した。大量の逮捕者も出ましたけれども、そのような事件が皮切りになって、どんどん反体制、あるいは大企業批判の動きが、特にインターネットの上で急速に広がっております。

他方では、この春以来、ナップスターと呼ばれる音楽ファイルを直接交換するアプリケーションが、ソフトウェア市場かつて例をみないといわれる1年少々で、3,800万人がこれをダウンロードして使うようになった。大学のキャンパスのインターネットのトラフィックの半分以上が、あっという間にこの音楽ファイル交換に使われてしまうといった現象が皮切りになりまして、PtoPという言葉が急速に普及いたしました。これはピア・ツー・ピア、つまり仲間対仲間、上下の関係をもたない対等の人々、あるいは対等のコンピュータの間のつながりという意味で使われている言葉なのですけれども、このピア・ツー・ピア型のシステムが単にコンピュータのネットワークのつくり方だけではなくて、今のアプリケーション、ソフトウェアのあり方から、さらにはビジネスのモデル、先ほどいいましたように、全部取引情報を公開してビジネスをしようとするとか、あるいは政治、インターネットを通じて、お互いの投票のスワッピングをやるといったようなことが、今回の大統領選挙では部分的にみられました。ゴアがぎりぎりの接戦を演じている地域のネーダー支持者に5割投票してもらって、そのかわり、ゴアの強い地域のゴア支持者はネーダーに投票するといったことをやるとか、今後、さらにそういう傾向は強まるだろうと思われます。

それから、情報通信のインフラそのものも、もう通信事業者ではなくて、自前でつくろうという、PtoP型インフラの動きというのも、特にカナダを中心に起こっております。それから、アメリカではシカゴ市が大々的な試みを始めています。

そういう中で、このPtoP、あるいは智民、ネティズンと称する人たちの間では、ビジネスをやっていても、利益の追求よりは、むしろ楽しければいい。あるいは愛を追求するのである。私どものような年配の人間には、ちょっと恥ずかしくなるような言葉を当然のことにようにいう若い人たちがたくさん出てきております。例えば、ホットワイヤードなどという問題の雑誌をご覧になると、そういうのが満ちあふれています。

 

 

 

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