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そういう形で、唯一元気だったのは、アメリカの地域電話会社だといわれておりますけれども、これも今年はどうやら怪しいというところにきておりまして、いよいよアメリカはハードランディングするのではないかといったような説まで出ております。そうすると、気の早い方々は、つい去年までは、アメリカはニューエコノミー、摩擦のない経済、景気変動のない経済になったのだ、これからは発展あるのみという話であったものが、論調が次第に変化してまいりまして、今やIT革命は産業革命に比べると比較にならない、大したものではなかった、もう資本主義はこういう状況のもとでは成立しないのではないかといったような、あるいはマーケットにおける競争を信じていたけれども、やってみると大変なことばかり起こっているとか、そのような議論が乱れ飛んでいるというのが現状かと思います。

そういった議論の多くは、多分、性急であり、軽薄な議論だと思います。しかし、よくみてみると、全然理由がないわけではない。確かに現在のいわゆるIT革命には、これまでの資本主義というか、資本主義のビジネスモデルを堀り崩すような、つまり、企業の投資意欲、特に長期的、大規模な投資意欲を減退させる要因が多々あると思われます。それは、3つあります。

その1つは、いわば利潤の源泉、経済学者はレントと申しますけれども、何らかの形で、独占的、長期的にレントの発生源をもっていると強いわけですが、これが今、次々と崩されております。まず、規制緩和を行うことによって、参入が自由になった業種では、競争が非常に激化しております。例えば、長距離電話の値段はとどまるところを知らない。ゼロに向かって下落を続けている。また、一たん技術革新をやって、有利な立場に立ったと思っても、それこそドッグイヤーとかマウスイヤーと呼ばれるように、どんどん技術革新が進みますので、当初の優位はなかなか保てない。たちまち投資が陳腐化してしまう。それから、周波数のような希少な資源を、例えば国からもらって、これをもとにもうけていたら、これは公有にして競売に付せと、そして、事前にレント分を全部とるぞといったようなことが起こっております。また、設備とか仕様については、公開して競争相手に使わせろ、あるいはみんなにオープンにしろということで、ここでもなかなか優位性を保ちにくい。

 

 

 

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