先生はたいへん有名でございまして、84年から、電脳の中で、トロンという新しいOS、現在はウィンドウズが世界を席巻しておりますけれども、先生は日本的な非常に身軽なOS、オペレーティングシステムとしてトロンを提唱いたしましたけれども、ややアメリカからバッシングを受けまして、現在、そのトロンというのは、携帯電話とか、いろいろな端末の中に使われている、最も世界で使われているOSになっております。そういう点で、常に日本的なOSということで坂村先生はご提言されておりますし、特に若い世代に対して、どういうITの教育をしたらいいのかということを中心にお話をしていただこうと期待をしております。
それでは、早速でございますけれども、公文先生の方から、まず問題提起をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○公文 私は皮切りということで、先ほど、薬師寺さんに歴史的位置づけも含めて考えてみろといわれましたので、「IT革命(の変調)と日本の対応」という題にしてあります。と申しますのは、日本は昨年の11月29日にいわゆるIT基本法を制定し、今月22日にそれを推進するためのEジャパン戦略なるものを定めたわけでありますし、今年度の補正予算では、IT関連8千数百億の予算をつけるということで、いささかおくればせながらではありますけれども、いわばIT革命に向かって離陸をしようとしたところで、どうやら乱気流の中に突っ込むという様相が日に日に明らかになっております。これは短期的なものだと思いますけれども、短期的な変調を起こしている。
特にアメリカを中心に、このところ毎日といいたいくらい入ってくるニュースは、急激に不況色が強まっていることを伝えています。昨年4月に、インターネット関連の、いわゆるドットコムと呼ばれている企業の株が暴落いたしました。それから、夏から秋にかけては、これはヨーロッパでありますけれども、第三世代の携帯電話の免許をめぐる競売がまず加熱し、その次は、皆さん談合に走り、そしてドロップアウトして、ごく少数の応札者しか出ないような国も続きましたけれども、大変な混乱をいたしました。その中で、無線通信企業の株価もやはり下がり、信用の格付も下落いたしました。そして、秋になりますと、アメリカを代表する通信企業であるAT&Tが、それまでの統合、合併路線を振り捨てて、また企業を4分割せざるを得ない状態に追い込まれ、続いて、AT&Tを追い上げてきておりましたワールドコムという新興通信企業の雄といわれていたところも、同じような分割路線、そして、つい数日前に大規模な雇用削減を発表したところであります。