また、IT革命の進行が、万人に恩恵をもたらすといわれても、ネットバブルの崩壊にみられますように、単に市場の評価をうのみにして、追従を続けるだけでは、手痛い失敗をこうむる可能性も高くなっているようにみられます。IT革命の本質を理解しながら、我が国の実情や特性に合った対応、戦略が極めて重要であることは多言を要しないところだと存じます。また、IT革命への対応だけにとどまりませず、21世紀の我が国は、急激な高齢化の伸展や、財政再建のための負担など、大きな課題を幾つも抱えておりますが、IT革命は単に情報分野におきます影響だけでなく、これら日本が抱えております構造上の問題に対しても、重大な影響をもたらすものといわれております。
本日は、このような問題に関しましても、ご参加いただきましたパネリストの方々から、IT革命が与えもたらします政治、社会、経済、文化等、重要な分野への影響をご指摘いただき、その影響と対応の仕方、そのための我が国が果たすべき課題等についても、貴重なご意見が伺えることを楽しみにしているところでございます。
最後に、今回のシンポジウムは、私ども世界平和研究所にとりましても、21世紀、新しい世紀、最初の重要な会議でございまして、本日のテーマを通じまして、今後の我が国の戦略のあり方はもちろんのこと、21世紀におきます我が国のあり方、あるいは必要とされる戦略全般についてもご示唆の深いご意見を伺えればと思っているところでございます。
それでは、本シンポジウムのディレクターを務めます薬師寺研究主幹にバトンを渡して、会議を進めていただきたいと思います。では、お願いいたします。
○モデレーター(薬師寺) 今、ご紹介にあずかりました平和研の研究主幹をしております薬師寺でございます。本日のモデレーターを務めさせていただきます。それでは、座って司会をさせていただきたいと思います。
今、大河原理事長から、ご挨拶の中にありましたように、平和研といたしましては、来年度のプロジェクトの中で、大きくITと政策決定、国家戦略の問題を中心に研究していく予定になっております。それに伴いまして、本日は、著名な3名の先生方をお迎えして、IT革命と日本の対応ということで、パネルディスカッションをしたいと考えております。これから先生方を簡単にご紹介いたしますけれども、その後、先生方に、20分から30分、それぞれお話をいただきまして、その後、フロアからのご質問をいただきながら、議事を進めていきたいと考えております。