最後に、福川所長は日本にとって、新規事業の展開と有為な人材の育成を行う仕組みとして産学連携が必要であり、これによってイノベーションを加速するIジャパンを実現することが可能となると締めくくった。
−TRON Project (とIT革命) (坂村健東京大学大学院情報学環教授)−
坂村教授は発表の冒頭、東京大学大学院情報学環の成り立ちや目的などを例示して、高度情報化の進展において東京大学がどのような対応を図っているかを簡単に説明し、大学の再教育機関化など重要な課題が多いと指摘した。
続けて坂村教授は、トロンプロジェクトの経緯と成果の概略を示し、世界で最も多く使われているトロンの機能特性とトロンを巡る国際政治経済的な動きについて説明と感想を加えた。その上で、坂村教授はすでにPCからウェアラブルあるいはユビキタスコンピューティングへと移行している現在、日本の技術ならびに利用状況は世界の最先端にあると説明し、極小パソコン利用によってさまざまな分野で変化が加速されると指摘した。
さらに坂村教授は、米国がIT革命を主導しているのは、莫大な軍事研究を長年行い、また軍事研究の民間転用などにきわめて長けていることにあると分析し、日本は学ぶべき点が多いと指摘した。その上で、坂村教授は米国が行った急速な自由化や市場化等のいわゆるアメリカモデルというのは、カリフォルニアの電力危機にみるように必ずしも最善の解とならず、むしろ米国では多数のIT関連企業が多額の投資金を集めて倒産したり、無料コンテンツ・無料サービスが軒並み行き詰まりを見せるなど、多くの弊害や反省点が現れているので、日本はこの点も充分参考にすべきであると指摘した。
最後に坂村教授は、今後の日本は独自性を追求することが必要であり、世界で唯一それが可能な国であると分析し、米国の後追いではなく、日本独自の技術開発、戦略構築が必要であると指摘した。