公開シンポジウム「IT革命と日本の対応」(概要)
平成13年1月29日 於:全日空ホテル
シンポジウムでは、IT革命がもたらす政治、社会、経済、文化等重要分野への影響ならびにわが国の実状と特性にあったIT革命への対応と戦略構築について招待パネリストによる発表と討議が行なわれた。発表を行ったパネリストは、公文俊平国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長、福川伸次電通総研研究所所長、坂村健東京大学大学院情報学環教授の3名にモデレータとして薬師寺泰蔵世界平和研究所研究主幹が加わった。
−IT革命(の変調)と日本の対応 (公文俊平グローコム所長)−
公文俊平所長は、IT革命には企業の長期大規模投資を減退させる要因が基盤にあってIT革命の変調の原因として作用している他、最近の動きとしてPtoP型システムの急速な拡大も影響していると指摘した。
続けて公文所長は、近代化は3つの局面である「公権・公優位時代」、「私権、私優位時代」を経て、IT革命下では公と私の中間である「共」・「共の権利」が主導する時代へと移行すること、また現在のIT革命は第2次産業革命の爛熟、第3次産業革命への移行、第1次情報革命の進行の3点で特徴付けられることを指摘した。
さらに、公文所長は、日本が第3次産業革命や第1次情報革命を推進していくためには、その両方を絡ませた第3の道である「共」のパラダイム、「共」のプリンシプルが重要であり、このような方向を目指すことによって現在起こっている短期の変調を克服すると同時に、新たな発展の道に導くことが可能となると指摘した。
−IT革命と日本の対応 (福川伸次電通総研研究所長)−
発表の冒頭、福川伸次電通総研研究所長は、さまざまなIT関連の国際比較を行って日本の位置づけを示し、日本が米国や欧州諸国から遅れている現状やアジア諸国が先行している事例等があることを説明した。次に、こうした状況を脱するには通信料金の引下げ等、IT関連のコスト引下げが重要であることを指摘した。
続いて福川所長は、米国のIT革命は3段階で進展してきたことを示し、第1段階は1984年のATT分割に始まる自由化、第2段階は96年2月の「新通信法」成立による通信と放送の一体化による発展、そして第3段階は最近1、2年の産業社会の大規模な情報化であることを説明した。その上で、福川所長は日本の現在の政策は米国の第1段階を目指すものであり、今後は米国が第4段階に移行するので日本の一挙に第4段階に突入する努力が必要であると指摘した。
さらに福川所長は、IT革命における経営には全体最適化型のプロダクティビティとリスクに挑戦するエクスペリメントがたいへん重要になると指摘し、そのためには従業員をITの経経営戦略に結びつけていくかが鍵となり、これには個々の構成員の能力を高めるエンプロイアビリティの向上と新規雇用を創出するエンプロイメンタビリティ改善の双方が必要であると指摘した。