−今後の日米関係−
どちらの候補が大統領となっても、対日政策では自由貿易を基本とし、大きな差はなかろう。永田町では、ゴア候補の後ろには労働組合があり、保護主義的な心配があるので、ブッシュ候補の方が望ましいとの見方が多いようだ。しかし、例えば日米間の自動車協定見直しの議論を考えた場合、米国内で一番影響が大きい部品メーカーのことを考えれば、共和党政権になれば日本は楽になると考えるのは早計であろう。
むしろ、今後重要になるのは、米国経済が悪化していった場合に貿易黒字の大きい日本に対する批判は、誰が大統領になっても議会との関係で考慮せざるを得ないという観点である。
もう一つの課題としては、北朝鮮に対してどのような対応を行っていくかである。現在のクリントン政権の北朝鮮に対する取り組みについては、民主党でさえ「やり過ぎ」との批判があるため、新政権では、いずれにしても若干クールな対応となる可能性がある。その際に、南北緊張緩和のなかで、在韓米軍のみならず、在日米軍の取り扱いを考えていく必要がある。さらに、中国のパワーをアジア全体の中で、どうバランスさせていくか、といった観点もあろう。
−政治の戦略的対応−
米国における日本専門家の意見については、次期大統領が誰になろうとも、意見は一つに集約できる。すなわち、アジアにおいては日本との戦略的対応が重要である、という判断である。確かに、日本と比べた場合中国の方が取り扱う必要のある問題が多いため、ホワイトハウスのアジア戦略の要職には中国の専門家が就き易く、日本の専門家は後回しになるという現実はある。しかし、それだけに日本に対する期待が過剰となる惧れがある。つまり、ストラテジック・ダイアローグ(戦略的な対話)を日本の政治家と行いたいと米国側は考えるが、これが満たされない場合に日本に対する不満となってしまう可能性がある。
こうした意味では、これまでの日米関係の中でストラテジック・ダイアローグが行われた最近では最後のケースが、当時のレーガン大統領と中曽根首相の関係であったと考える。今後の日米関係でも、例えば、中国に対して日米両国がどのような立場を取るべきか、といった観点についても、このようなストラテジック・ダイアローグが極めて重要となろう。