日本財団 図書館


しかし、本当に大切なのは、FTAそのものよりも「FTAに向けた環境づくり」である。例えば、日韓間の航空便問題がある。年間330万人が往来する日韓間の航空便が少ないため、観光客だけでいっぱいになってしまって、ビジネスマンの出張に支障を来している現状は何とかしたい。

 

−南北和解−

6月15日の南北首脳会談は予測していなかった。もっとも、歴史とは偶然の産物の側面もあるので、後づけになるが、3つの重要な意味を読みとることができる。

1] 冷戦の終焉

韓国人にとって冷戦は残酷な歴史だった。離散家族問題など、世界で最も冷戦の被害を受けた国民かも知れない。

この冷戦の被害を終わらせるための金大統領の包容政策の成果が首脳会談だったと言える。

2] 自主

分断の歴史は強制されたものだった。

この分断を乗り越え、自主的に解決を図ろうという民族自決的側面がある。

3] 平和共存の制度化

5年前には分断は固着化するものとみられていたが、「平和共存」の道筋が見えてきた。

 

ただ、平和共存の定着には20〜30年はかかるのではないか。南北関係・米朝関係・日朝関係の改善の改善に焦らず取り組んで行きたい。我々の目標は統一ではなく、平和(共存)である。かつて、ベトナムは戦争で統一され、ドイツは吸収による統合だったが、韓国は戦争による統一は望まないし、吸収による統合も考えづらい。“Korean Model”を模索しなくてはならない。

 

政治体制と平和の間には関連がある。体制が民主主義的であればあるほど、体制間の関係は平和であると言える。実際、最近170年間、民主主義国家間には戦争が起きていない。これは、カントやプラトンまでも遡れる考え方でもあり、北朝鮮が民主化すれば、自ずと平和が訪れることだろう。

世界187ヶ国の政治体制を分析してみると、約40ヶ国が民主国家であり、約100ヶ国が民主国家を志向している。北朝鮮の民主化も歴史の流れなのではないか。北朝鮮が経済危機により内部崩壊するのではないか、との見方もあるが、政治学的な一般論としては、貧困だけで政権は倒れず、政権崩壊には“+α”の要因が必要とされる。北朝鮮の政権の政治的調整・管理能力は高く、“+α”を除く能力を備えているから内部崩壊はないと思った方がよい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION