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崔相龍 駐日韓国大使 講演会

「日韓関係と南北和解」

2000年10月27日 於:ホテルニューオータニ

 

−日韓関係−

1998年以来、日韓両国政府レベルでは『過去を直視し未来を志向する』姿勢が定着している。現在、韓国のマスコミは日本の教科書検定作業に高い関心を抱いており、「歴史は消せない」ので、日韓両国の指導者は歴史の重みを自覚しなくてはならない。

文化交流について、韓国では1998年に日本文化を開放したが、「文化交流」は単に文化の交流に留まらず、文化産業や経済力そのものを意味する。その意味で新たな文化的植民を危惧する向きもあり、金大統領としては勇気ある決断だった。「文化交流」とは、互いに学び合う限りなき過程、と考えられるが、日韓両国は、江戸時代初期の頃までは韓国がCultural Giverの立場で、朱子学などがその好例と言えると述べた。その後、江戸時代中期頃からは韓国が日本から学ぶことが多くなっており、文化交流とはお互いに学び合うものという状況にある。

日韓両国は同じ儒教文化圏に属していることから、類似の文化を持っているとみられることが多く、確かに文化的等質性が高く、親近感を覚えることが多いが、相違点もあると。例えば、儒教と密接な関係にある科挙制度を韓国は採用したが、日本では採用されなかったために、韓国では文士政治が、日本では武家政治がが、それぞれ発達してきた経緯がある。今後は、価値観や思考様式の差異を認めて、相互に尊重すべき、そういった時期に来ているように思う。

さらに、日韓両国はともに教育水準が高く、東洋と西洋の知識に関するバランスが良い国であると言える。世界の中で、韓国だけでは弱く、日本だけでは寂しい。日韓両国の交流を深め、シナジー効果をあげて行くべきである。

 

−日韓共同プロジェクト−

日韓両国は1,000年以上の交流の歴史を持っているが、共同作業の経験は少ないし、互いに共同作業は得意ではない。その意味で、2002年のサッカーのワールドカップは意味のある大規模共同プロジェクトと言える。スポーツは、政治を超えた普遍的メッセージを持っているから。ワールドカップのみならず、これをモーメントとして、関連する文化行事が興味深いのではないか。

むろん、経済分野の共同プロジェクトも進展している。日韓両国はIT産業への共同しての取り組みに合意しているし、浦項製鉄と新日鐵の提携のような例もある。FTA(自由貿易協定)も中長期的に志向されており、ビジネスレベルでの研究段階から政府レベルでの検討にあがって来ている。

 

 

 

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