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これまでの中立政策に対して、新しい政権(注:2000年2月の国民党と自由党の連立政権)は、ヨーロッパ共通の防衛政策に対し、完全に参加することである。このことは、新政権がこれまでの政権と最も違っている点である。

 

−EU拡大−

オーストリアは、EUの中東欧への拡大を重視している。中東欧諸国のうち数カ国は、オーストリアと特別な歴史的関係を有している。中東欧諸国の加盟により、EUの面積は30%以上拡がり、人口は1億人以上増加する。オーストリアは、中東欧諸国に対する直接投資の7%を占めるなど、OECD諸国の中で主導的役割を既に果たしている。中東欧諸国のEU加盟により、オーストリアは大陸の中心としての役割を戻し、これら諸国とのビジネスの中継点(ハブ)としての役割の重要さが増すであろう。

 

−EUの機構改革−

EUが拡大し政治統合へ向かうためには、6カ国の関税同盟として出発してから40年以上経った現在の機構は根本的改革が必要である。1996年の政府間会合(IGC)によって採択されたアムステルダム条約においても、重要な機構改革が行われている。しかし、より中心的な内容については合意されずに、現在、新しい政府間会合で、今年(2000年)末までを目標に議論されている。政府間会合での中心的議題は、欧州委員会の規模と構成、閣僚理事会における多数決の方式と対称分野の拡大、一部の国だけで先行的に統合するという「緊密化協力」(closer co-operation)である。

EUの機構をより効率化し民主的なものにすることについては共通の合意があるが、大国と小国とのバランスをいかにとるか、一部の国だけで先行統合する「柔軟性」(flexibility)については多くの議論がある。オーストリアは、加盟国の人口規模が重要な要素であることは認めるものの、機構や意志決定などにおいて唯一の基準であってはならないと主張している。EUの創設国が、意志決定において、より小国を重視するバランスをとっていることを評価している。オーストリアは、既にEMUで行なわれているように、「緊密化協力」そのものには反対していない。しかし、いくつかの重要部分では慎重であるべきであり、差別化しないという原則のもとに、加盟国全てに参加の道が開かれるべきと考えている。

 

−自由党の連立政権参加−

2000年2月の自由党の連立政権参加により、オーストリアは他のEU加盟国から制裁を受けている(6月30日現在)。このような行動は、EUの団結と連帯に対して脅威を与えるものであり、自由で民主的な選挙の結果を否定するものである。早急に解決策が見出されるであろう。

 

 

 

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