シュヴァイスグート駐日オーストリア共和国大使 講演会
「オーストリアの視点から見た欧州連合」
平成12年6月30日 於:ホテルニューオータニ
−オーストリアとEU−
オーストリアは、スウェーデン、フィンランドと共に、1995年にEUに加盟した。これら三国のEU加盟は80年代後半のソ連・東欧の共産圏の崩壊で具体化した。また、加盟に際しては、三国が中立政策をとっていることも議論になった。EUに加盟したのは、単に経済的メリットだけではなく、「欧州の家」の建設に貢献するためである。
オーストリアは、1998年の後半、EUに加盟してから初めての閣僚理事会の議長国を担当した。1998年の後半は、ユーロ導入直前の準備期間であり、議長国としてその準備に全力を挙げた。オーストリアのこれまでのEU加盟を総括すると、非常に積極的な評価を与えることができる。オーストリアは、EU統合の更なる深化と強化に貢献している。
−経済通貨統合(EMU)と経済構造改革−
単一通貨の導入は、1958年のEEC創設以来の欧州統合の最大のステップである。金融政策と物価の安定に責任を持つ欧州中央銀行(ECB)に対して、ユーロゾーンの政治的参加が必要であるという議論が起こった。この結果、いわゆるユーロ11という非公式グループが出来た。オーストリア議長国は、より緊密な経済政策の調整のため、このグループの設立に貢献した。
ユーロの信頼性に関するもう一つの重要な議論は、G7やIMFなどの場において、対外的に共通の声を持つということである。ECBの議長と、ユーロ11グループの議長がG7に参加するという合意が出来た。欧州委員会の役割とIMFでの代表の扱いは未決着である。EMUは、厳しい財政規律、より緊密な経済政策の調整、そして、生産・労働市場をより効率化し雇用を増加させるための経済構造改革プログラムを必要としている。オーストリアは、先週のフェイラでの欧州サミット(6月19,20日)で合意されたEUの戦略「eヨーロッパ計画」を支援している。このような経済改革プログラムによって、市場統合と共通通貨ユーロの便益がより享受できるようになるだろう。
−政治統合−
EMUは究極的には政治統合へとつながるものである。旧ユーゴスラビアの崩壊や最近のコソボでの紛争において、ヨーロッパの外交は非効率的で信頼性を失っている。しかし、この分野でもいくつかの進展が見られる。昨年1999年、非軍事的分野同様に軍事的分野においても対外的な行動をとるための管理体制を創設した。暫定的な警察・安全保障委員会の枠組みと暫定的軍事機構が創設された。この分野でのオーストラリアの立場は大きく変化している。