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(米国)

米国では、台湾安保強化法案(TSEA)および全米ミサイル防衛(NMD)構想を巡る論戦が繰り広げられている。TSEAは、2000年2月に下院で可決され、上院に送付された。同法案は、米国と台湾との軍事協力を通じて、台湾防衛の強化を企図したものである。ただし、クリントン政権は拒否権行使の構えである。

一方、NMDについては、「ならずもの国家」に対する限定的な防衛の構築に超党派的支持が得られているだけにいずれ大統領がNMDに対する支持を決断することになろう。中国側からみると、NMDは台湾政策に強く結び付いている。NMD支持の決定は、少なくとも心理的にはアジアの米同盟国にとってTMDに関する決定を行なう上で追い風になる。中国にとって、TMDはアジア全般における中国の立場を脅かすだけものである。中国のTMD反対理由は、そのシステムに台湾が組み入れられてしまうためである。

 

−中国の軍事オプション−

中国の対台湾関係での軍事オプションについてみると、さまざまなオプションが考え得るが、台湾の反感を単に強めるだけであったり、対米関係を悪化させるなど問題が多い。しかし、だからといって中国がこれらのオプションを採用しないということにはならない。

 

−結論−

中台関係が安定基調を持続しうるどうかは、旧来の戦略的曖昧さと、新たな戦略的明確さとのバランス如何である。戦略的曖昧さに関するもっとも重要な要素は「一つの中国」が存在しているという虚構である。「一つの中国」という原則について共通の理解に到達するための中台対話の再開を訴えていくことが重要であろう。

戦略的曖昧さの第2の要素は、米国による台湾防衛に関するものである。台湾防衛を支持する米議会の圧力によって、将来の米政権は台湾の安全について完全な保証を迫られていくかもしれない。

台湾海峡における戦略的な曖昧さと明確さとのバランス確保は、次期米政権にとってもっとも困難な外交政策となるであろう。うまくバランスさせるにはアジアの同盟国、なかんずく日本との協調が必要である。また、EUも米国と共同歩調をとるべきである。

中台問題は、沖縄サミットにおいて議論されるべき問題である。議長国日本にとって厄介な案件であろうが、中台関係の安定化について議論しないのは戦略的にみて怠慢である。サミット声明には、G8が「一つの中国」へのコミットを再確認すること、G8が一方的な現状の変更、特に武力行使によるそれを歓迎しないこと、G8が現状に変更を加える台湾の挑発的行動を支持しないこと、という3点が盛り込まれることを期待する。

 

 

 

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