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ジョン・チップマン国際戦略研究所(IISS)所長 講演会

「中台関係とグローバル安全保障」

平成12年4月12日 於:全日空ホテル

 

−深刻化する中台問題−

中台問題は、長い間、国際問題の中で最も危険視されてきた。殊に1995年以降、舌戦が激化している。台湾海峡の平和は、これまで「戦略的曖昧さ」によって保たれてきた。しかし、主役である中国、台湾、米国では、それぞれの政治指導者に同問題についてより大胆かつ明確な立場をとるよう求める国内圧力が強まっている。このため、現在の枠組みが揺さぶられており、短期的にはともかく、中長期的には、軍事的衝突のリスクは高まっていくであろう。

現在のあり方に最も不満なのが中国である。問題は、舌戦のエスカレート、国内圧力の強まり、両岸関係の軍事的緊張が外交手段により解決可能かどうかである。もしそれができなければ、単にアジアだけでなく世界的な安定性が危機に晒されるのである。

 

−舌戦のエスカレート−

米国については、「3つのノー」への言及や、中国との「戦略的パートナーシップ」確立の動きが、台湾にとって不安定要因となった。台湾については、1999年の李登輝前総統の「特殊な国と国の関係」発言は、何ら交渉上の利益にならなかった。また、中国については、2000年2月に台湾問題に関する白書を発表し、台湾への武力行使に踏み切るケースとして「台湾当局が交渉を通じた統一問題の平和的解決を無期限に拒否した場合」を新たに明示した。同白書は台湾側の反発を招いた。

 

−国内政治の影響と役割−

(中国)

江沢民主席が台湾政策を掌握している限り、軍事的冒険に走る可能性は低い。しかし、いつまで同主席が掌握できるかは不確実であり、権力闘争の兆しもみられている。人民解放軍は、台湾の大陸からの分離を国辱と感じている。もっとも、「法輪功」の問題や、WTO加盟の条件となる農産物等の輸入関税引下げに伴って、今後、農村部の失業問題深刻化が予想されていることなどから、台湾問題ばかりに注力できない状況にある。

(台湾)

陳水扁氏の勝利により中国内戦という1つの章が終わりを告げた。国民党が政権を失ったことで、中国は台湾の国内政治の中から生まれてきた交渉相手と相対することとなった。陳新総統は、李前総統に比べ、大陸政策についてより柔軟に対処する可能性がある。

 

 

 

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