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Civil Societyという概念は80年代の東ヨーロッパで復活したとも言えるもので、共産主義を転覆した際に、確かに国毎に若干違った意味を持ったが、基本的には社会を変えるといった側面がある。別の観点では、ソ連の覇権とは異なったコミュニティーから生まれたといった意味もあったわけで、そうした平和活動を政府に認めさせる意義があった。民主主義が誕生するための場を提供したと言える。

国際的な観点で注意を要するのは、こうした東欧諸国に対して国際的な活動を通して政策面での注文を付けることは、国内の彼等自身の政策と一致しない可能性があり、二律背反な要望を持ってしまうという点である。Civil Societyを国家に対立する概念として捉えるべきかといった問題である。

NGOは多様な価値観を持っており、たとえばシアトルでの反対行動自体は評価するが、彼等の考え方は自分とは異なる、といった立場である。

この後行なわれた質疑応答等では、1]シアトルなどの抗議行動について、NGOのメンバーが参加しているのは事実だが彼らははCivil Societyの市民として参加しているのである、2]南アメリカのNGOの活動を紹介し、必ずしも政府に対立するものとは限らず、むしろ政府の民主主義政策を支援するものもある、などが議論された。

 

第4セッション 「NPOへの政策的支援」

 

第4セッションでは、山岡義典 日本NPOセンター常務理事・事務局長、エリザベス・チャム フィランソロピー・オーストラリア理事長、パク・テキユ 延世大学経済学部教授からの報告がなされた。

山岡氏は、以下の点を指摘した。

日本では、長く民間非営利団体は発達しなかったが、1970〜80年代に経済成長を背景として人々の欲求の多様化や社会の変化が進み、自主的に社会的な課題に取り組む団体が出現した。この結果、民法に基づく非営利法人制度の不完全性が認識され、1998年にNPO法が国会で成立した。世界の常識からは不十分であるが、民間非営利活動の重要性が認められたことが重要である。地方分権や介護保険等で活動の場が広がり、団体の側でも法律制定を契機にあり方の問い直しが行われた。また、中央省庁が再編され、情報公開法が施行される中で、中央省庁の側でも政策過程の中でNPOを意識する動きが出ている。

NPO法は、今後も活用しつつ見直することが重要で、大きな課題は税制である。与党税制調査会は、寄付金等への税制優遇を与える方針を決定した。

チャム氏は、以下の点を指摘した。

オーストラリアでは、1813年に最初の慈善団体が設立され、幅広い組織が幅広い役割果たしており、シドニーオリンピックのボランティア活動に見られるように、その社会の中での存在は大きい。しかし、その重要性は最近まで認識されておらず、Civil Societyの中では末席としての役割しかなかった。しかし、今やNPOは民主主義のためのみならず、資本主義の発展のためにも重要となっていると認識すべきである。

 

 

 

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