タイにおける問題は、NPOへの寄付金について税控除は無いなど、NPO関連の政策があまり存在しないことである。また、財源の問題や、離職率が高くノウハウを蓄積できないなどの問題もある。
この後行なわれた質疑応答では、1]NPOは市民から信頼を獲得するためアカウンタビリティ向上・透明性確立が重要であること、2]米国の学校で奉仕活動を義務化しているのは5%に満たない、義務化よりも奉仕活動を奨励する教育を行なう方が効果的である、などが議論された。
第2セッション 「21世紀のCivil Society(市民社会)とNPOへの期待」
第2セッションでは、山本正 財団法人日本国際交流センター理事長、ピーター・ガイスナー ハーバード大学アジアセンター・シニアアドバイザーの報告がなされた。
山本氏は、以下の点を指摘した。
Civil Societyという言葉の意味が混乱しているが、現代的なコンテクストでは、NPOやNGOに関連して用いられることが多くなっている。このセッションのタイトルにあるような「21世紀のCivil Society」といった場合には、グローバライゼーション等で複雑化していく社会に国家が十分に対応できなくなりつつある状況に対して、市民が、より良いガバナンスを求めて、NPOやNGOに結集し、自らの利害やアイデアを表明し、情報交換し、成果を達成し、さらに国家に要求を行い、官僚機構にアカウンタビリティを確保させるような状態をイメージすればよいのではないか。
日本においては、戦前戦後のキャッチアップの時代を通して、官僚機構が有効に働いていたため、Civil Societyの発達は遅れたが、今日、官僚機構の限界が露呈し、同時に、若い世代に個人主義が定着するにつれて、Civil Societyの占める割合は急速に拡大しつつある。こうした公的部門からCivil Societyへのガバナンスのシフトが日本を再活性化させることとなろう。
日本のNGO、NPOは予算が100万円単位、専従職員が2〜3名の零細なものが多い。これらを支援していくために、政府は、税制優遇や各種リソース確保への協力が必要であろう。一方で、官僚組織には、NPO等を、自らの出先機関か子会社のように扱いたがるという問題もあることを指摘したい。
ガイスナー氏は、以下の点を指摘した。
アジア途上国に対する国際援助の歴史を振り返ると、1950〜60年代については、餓死を防ぐということが主眼で民間の出る幕は余りなかった。が、80年代に入って、食糧供給に代わり貧困撲滅が目的となると、市民の参加が重要になりはじめ、さらに、90年代にはいると第三世界のNPOを援助に活用するというところまで来ている。
アジア途上国において、政府部門は急速な経済発展や通貨危機の中で変化に対応できず、権限の委譲を進め、小さな政府になろうとしている。