第1セッション 「NPOの現状と課題」
第1セッションでは、山内直人 大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授、ヴァージニア・ホジキンソン ジョージタウン大学ヴォランタリー組織研究センター教授、パイブーン・ワタナシリサム コミュニティ開発組織研究所理事長の報告がなされた。
山内氏は、以下の点を指摘した。
日本では、2年前のNPO法に基づき約3,000のNPOが設立され、NPOへの寄付に対する非課税措置の導入が最近与党で合意された。日本人はNPOといえば環境保護団体等を連想するが、実際は学校等も含まれ、その数は90年代以降急速に増加している。NPO従事者は総雇用数(農業部門を除く)の3.5%、約200万人で、諸外国との比較では中程度である。
NPOの内訳は、47%が保健・医療、22.5%が教育、3.1%が文化で、コミュニティ開発や環境の割合は低い。日本の場合、NPO財源について寄付の割合が諸外国比で低い。米国ではどうであろうか。高齢化社会において、資産を持つ高齢者が多いと推測され、それらからの寄付が期待できると予測している。
ホジキンソン氏は、以下の点を指摘した。
米国では、90年半ば以降、福祉改革および州政府への権限委譲等の政策により、低所得者層に対する政府支援が実質的に削減された。その結果、特に医療サービスを中心にNPOに対する援助要望が高まっている。過去10年間にわたる税控除措置によりNPOへの寄付金は増加しているが、山内氏の日本の事例発表からその重要性を再認識した。
NPOは、政府の他に民間部門とも相互依存・競合を深めてきておりNPOの使命が曖昧になるという問題が生じる一方、大企業が学校にコンピュータを提供する等協力関係も見られる。90年代からボランティア志向が高まり、スウェーデンのGDPを超える程になった。
また、ベンチャー基金をつくりそれをもとにNPOに投資するという新しい寄付形態や、「E-フィランソロピー」(オンラインによる寄付)も出現したため、より多くの若者が参加する可能性があるだろう。米国における問題は、好景気下での雇用、特にIT専門家の雇用である。
パイブーン氏は、以下の点を指摘した。
タイのNPOは、フィリピンのように活発ではなくまた奥行きもなく、アジアの中では中程度といえよう。教会や財団などは法人格を有し、その数約20,000といわれるが、毎年1,000程度増加している。活動内容は福祉関係が中心であるが、他に人権擁護活動や農村再建といった開発なども行なわれている。中でも宗教ベースの活動が主であるが、最近は企業によるフィランソロピーも増加してきた。また、NPOに加えて市民社会団体の数も増加してきた。
97年の通貨経済危機後、NPOがタイのシステムを補完するものとして重要になってきた。