これに対してタクール博士からは、1)様々な障害があったので、NATOは仕方なく国連の枠組みを使わなかった、2)NATOの行動が既存の秩序を損ない、他の分野、軍備管理などにどのような悪影響を与えるのかを考えるべきである、との反論がなされた。
また、そのほかのコメントとして、1)国連が決定できないと言う状況は、改革をして、日本やドイツが入っても変わらないのではないか、2)EUの統一外交・安全保障政策としてどのような計画があるのか、などが寄せられた。最後に薬師寺議長は、1)国連のシステムの欠点をどのように改善することができるのか、2)NATOの行動以外に他の実現可能なスキームがあったのか、3)コソヴォ紛争のアジアへの意味合いを今後とも継続的に検討する必要がある、とのサマリーがなされた。
第4セッション 「東アジアへのインプリケーション・日本の国際貢献」
第4セッションでは、東アジア及び日本に視点を移し、コソヴォ紛争がもたらすインプリケーションと日本の国際貢献について議論するとともに、第1〜第3セッションでの議論を総括する討論が行なわれた。討論に先立ち、まず、米国の戦略国際問題研究所副所長のコッサ博士から報告を受けた。
コッサ博士は、まず包括的な指摘として、コソヴォへの介入がそのまま今後の介入の増加につながるものではない、との認識を示したが、また一方で、ベトナムでの「人道的」介入経験がカンボジアでの不介入につながり、多くの痛ましい事態を招いた事例もあり、高度の判断を要する問題であることは間違いないと指摘した。
次いで、東アジアにおける緊張地域について触れ、北朝鮮では事態悪化が起こらないと見ていること、台湾については、もし紛争が起こったとしても、人道的介入とは違う次元での介入検討がなされるとの見方を示した。また、ARFについて、予防外交的意味を持つとはいえ、基本的に任意の集まりであり、紛争が起こった際には、ARFの場での協議ではなく、紛争関係国が協議すればよいとの考えを示したが、台湾については、国連で議論されることがない以上、ARFがその場になり得るとの認識を示した。
また、東アジアにおける紛争に際しては、日本に対する期待は大きいと述べ、アジアにおける指導力を発揮して欲しいとして報告を終えた。
引き続いて、中国のツアン・ユンリン中国社会科学院アジア太平洋研究所所長から報告がなされた。ツアン氏は、NATOの介入の意味、合法性、将来のあり方等について、コソヴォへの軍事介入は必要であったのかどうか、別のやり方があったのではないか、そして、人道問題に対し、非人道的な軍事介入が許されるのかという疑念を表明した。