第2セッション 「人道的介入と内政不干渉―その2」
第2セッションでは、岩間陽子政策研究大学院大学助教授と、ゾラン・パジック 英国王立国際問題研究所アソシエイトフェローから報告を受けた。
岩間教授は、まず、現代国際社会の基礎である国家主権、ウエストファリア体制について述べ、国家主権は以前から絶対的なものではなかったとの説を紹介し、介入の是非を巡る議論の際には、国家主権とは何かを問い直すことも必要であると述べた。
更に岩間教授は、国家主権の概念は変化しており、1990年には今回のような介入は考えられなかったが、2000年の現在では介入が実行されており、その点にも注意すべきであると指摘した。
最後に教授は、国連の果たすべき役割について触れ、国連が国際社会の期待に応えるためには、安全保障理事会の改革が不可欠であるとの認識を示した。
ついでパジック博士からの報告を受けた。パジック博士は、NATOの役割をどう再構築するか、また、ボスニアの経験から何を学ぶべきか、を議論の重要なポイントとして指摘した。
まず教授は、ボスニアヘルツェゴビナにおける経験があるにもかかわらず、10年も経ないうちに、コソヴォで痛ましい事態が起こってしまったことについて触れ、歴史から学ぶ重要性を指摘し、人権問題を国内問題として非介入政策を採ること、また平和へのアジェンダの欠落と、その結果、主要国および国連が何ら対応を取らなかったことが、その後のコソヴォでの紛争につながったとの認識を示した。主要国及び国際機関は、ユーゴスラビアにおけるナショナリズムが崩壊した社会主義政権と同様に、全体主義であり、マイノリティの権利や個人の権利を無視するものであったことを見逃してしまったと指摘した。
また博士は、地域紛争に対しては国連よりも地域機関のほうが適切な対応が可能であり、地域機関と国連の協力がうまく機能したとき、介入の効果が上がると述べた。
更に、地域に平和を取り戻す作業は、軍事的介入後の民生的な協力や経済援助が重要であるとの認識の下、NATOは軍事同盟にとどまらず、上記のような役割をも合わせ持つようにすべきではないかと述べた。
報告の後の質疑応答では、NATOの役割について、人道的介入の根拠について、国家主権について等、活発な議論が行われた。