資料(講演録)
医療現場におけるヘルスケア
デューク大学メディカルセンターの取りくみから
1 ケアする人をめぐる状況
アメリカでは全体の約23%の家族が50歳以上の人の世話をし、約700万人のアメリカ人が、家族の一員である病人や老人の介護をしています。
また、在宅介護全体の85%を専門職ではない家族やボランティアが担っています。公共の保健医療機関は、訓練や研修を受けていない人に介護についての基礎訓練クラスを開催したり、新しいシステムづくりを奨励するようになりました。
病院やホスピスなどの施設で働く医療スタッフは、仕事量の増加や多大な体力的な要求などから多くのストレスを受けています。彼らの多くが仕事に対する不満、精神衛生状態の悪化、バーンアウト、大変な緊張を経験していることが報告されています。しかし、医療スタッフの健康や仕事上の満足度、幸福に対する考え方が、仕事の成果や生産性、ケアの質に与える影響は重要なことであるにもかかわらず、裏付けとなる研究はまだほとんどされていません。
2 デューク大学メディカルセンターの文化サービスプログラム
デューク大学メディカルセンターでは、院内にある文化サービスプログラムが中心となって、患者だけではなく、病院関係者に対してもさまざまなプロジェクトを行っています。医療を提供する人へのケアも非常に大切だと考えているからです。
デューク病院は1930年に開設されましたが、1980年に完成した新しい建物の建設中に「文化サービスプログラム」が始まりました。この新しい建物は100床あり、ほとんどの患者が短期入院患者です。
プログラムは、芸術によって、患者やその家族、病院のスタッフにとって病院を良い場所にしたいと思った一人の医師によって始められました。彼ははっきりとした計画にもとづいてプログラムを考えていたわけではなく、いろいろなことを試みながら、患者の入院が非常に短期であるという状況のなかで何がいちばん良いかを模索してきました。