日本財団 図書館


1年間の活動を終えて総括研修で会うボランティアに、協会スタッフは驚かされることが多い。彼らは何倍にも成長して帰ってくる。表情、身のこなし、会話の中身…その一つひとつに、体験と学びを十二分に実践したことが手にとるようにわかる。

「ボランティアをケアする」うちにスタッフ側がケアされている場合もある。1年間を一緒に悩み、喜び、そして応援しながら、スタッフも共に成長していき、そのうえで、彼らの気もちに少しでも近づいていきたいと考えている。

(記 阿南健太郎/JYVAスタッフ)

 

10ヶ月の活動も半分にさしかかろうという9月、ボランティア365の中間研修が行われた。半年間、活動先の現場で揉まれてきた青年たちは、それぞれに抱えている想いを他のメンバーたちに伝えあい、自分自身や活動をふりかえる。研修初日、集合場所に集まったボランティアたちは、真っ黒に日焼けしたり、腕に筋肉をつけていたりと、4月とは違った顔を見せていた。

山梨県の身体障害者療護施設「麦の家」に派遣された宮島智子さんは、沖縄県出身の24歳。大学を卒業すると同時にボランティア365に参加した。派遣された当初は、スタッフとほぼ同じローテーションのもと、身体に障害をもっている人たちの入浴や食事など身の回りのお世話に走り回った。そんな日常を過ごすなかで、「本当はみんな、もっとゆっくりと、いろいろな話がしたいんじゃないのかな」という考えが彼女の心にとまる。身体に障害をもった方たちと、毎日介助という方法を通して関わりながら、利用者さんのそんな想いを受け止めようとした。しかし、そうするための時間や余裕が、自分にはあまりにも少ない。現場は忙しく、ひとりでも多くの人の手がほしい…。一方で、皆ともっと話がしたい、ゆっくり関わりたい、スタッフと同じではなく自分がボランティアとしてできることはほかにあるはず、自分の役割は何なのだろう…。さまざまな現状と自分の気持ちの狭間に揺れながらも、自分がここに来た意昧を問い、結局、彼女は自分をローテションから外してほしいという希望を伝えた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION