「いいんだよ」と語りかけるもう一人の自分
ケアする人のケアができるためには、「納得する心」が必要なのではないでしょうか。自分に対して「いいんだよ」と語りかけるもうひとりの自分をつくっていくのが、いちばん大事だと思います。
しかし、そのもうひとりの自分を支えるのは、まわりの人だと思います。私にとっては、ステーションで泣いていたときに力ウンセリングをしてくれた友人や、私が仕事を辞めるときに「私たちを棄てて出ていくのか」と言った利用者の家族、そして、そのことに対して「そうではない」と言えたゆるがない自分です。
仕事を始める前は、近所の人とのつきあいを大切にし、夫や子どものことばかり考えていた普通の主婦でした。今の自分の姿はそのときには想像もできなかったことです。今は、これまでの辛かったことや嬉しかったことを全部含めて「よかった」と思えます。
60歳までには、本当の意昧でいい自分になっていたいと思います。そして、70歳ぐらいには、今見えかけているもの、私の人生にとって大切なものを完成させたいと思います。今はその過程にいるのでしょうね。
II. ケアは生きているなかにあるもの
障害のある人の生活ホームで働く
興味をもつこと
障害のある人たちの生活ホームで、ケアの仕事を3年ぐらいしています。ケアの基本は、相手を尊重してまず受け入れることです。自分の気もちを押しころすというわけではありませんが、相手を尊重する分、ストレスも感じやすいのではないかと思います。ケアする相手の言いたいことを聴こうとする分、自分自身も友だちや家族にそれを伝える機会をもちたいと感じます。
仕事を始めた当初は、介助そのものに目がいき、言語障害などの身体的なことがわかるようになるために時間がかかりました。そして徐々に、その人の内面や、その人がこれからやっていきたいことなどに興味がでてきますが、私が相手に興味をもつと、相手も少しずつその人自身を見せてくれます。良い関係をつくっていこうとすると、私も自分自身をさらけだす必要があります。