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◆会のお年寄りから、「あなたがヘルパーで来てくれたらいいのに」と、度々言われるようになったのがヘルパーになった動機。まだ新米だが、3人のお年寄りを見送った。いまになって良かったと思うのは、私が型破りなこと。業務内容はこなすが、それだけと割り切れない。ヘルパーは利用者と個人的な付き合いをしてはいけない。それもわかるが、訪問回数が増えるほど情がうつり、利用者から大切な方になっていく。

それをいけないと言われても困る。時間に追われ、規則でがんじがらめのヘルプサービスには味気なささえ感じる。だからこそ、ぎりぎりのところまで私らしさを出して接している。その上で、ヘルパーがやれないことをボランティアにしてもらえたら、在宅のお年寄りの生活が潤うと思う。

◆お年寄りの最期に立ち合う度、「死に様はその人の生き様が反映する。いや生き様の結果、人生の集大成だ」と思う。納得のいく幕の閉じ方をしたいのなら、元気なうちから心しておかなくては…。「老いを考える会」やヘルパーとしてお年寄りの生き様にふれるようになって、自分はどんなふうに生きたいのか、幸せとはどんなことなのか、人は何のために生きているのか、なぜ死ななくてはならないのか、答えは出ないが、いろいろ考えさせられる今日この頃だ。

◆1年4カ月、週1で家事援助に訪問してきた85才の女性が現在危篤。最近、ひとまわり小さくなり、息づかいが荒くなっていたが、医者から特に注意はされてなかった。1カ月前から押入や台所の整理を頼むようになった。1週間前に訪問した時には、だいぶ気が弱くなっていて、「あたしが死んだら、あんたお線香をあげてね」「まだ着てない着物を着て、東京へ行きたいの」と言っていた。芝居を見に明治座に行きたかったのだろう。

十指に余るほどの趣味を持ち、1日が24時間じゃ足りないくらい、やりたいことがあるおぱあちゃまに接してきたおかげで、「たとえ老体にムチを打ってでも、やりたいことのあるお年寄りになるぞ」と思えるようになった。

母は、私が16才の時、47才で腎臓病で亡くなった。「病気が治ったらお琴を教えたい」と、何度も言っていた。母が生きていれば同じくらいかなと思うお年寄りに出会えてうれしい。中には、「死にたい。早くお迎えが来ないかしら」とぼやく方もいるが、私は長生きのお年寄りが大好きだ。

 

 

 

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