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III. 第4回全国結核セミナー

今回実施された第4回全国結核セミナーについては、実施概要の項にて報告されているので、ここでは今回のセミナーの特徴などを述べることとする。特に印象に残った点は次の通りである。

 

1] 今回も政府の会議室で会場いっぱいの医師を集めて2日間のセミナーが実施されたが、参加者は極めて熱心で懸命にノートをとっており、退屈している参加者は見られなかった。相変わらず英語は通じないので通訳を通した講義となったため、当方に理解し難い点があったことは残念であった。

2] 最も議論が白熱した問題は、患者が結核でなく、例えば肺炎の疑いとなった場合、診断、治療の公費負担がなく自費となってしまうが、こういう場合の対応を公費でまかなえるようにしてほしいと言う問題であった。多くの途上国で要求されている問題と同じである。医学的に問題となったのは、胸膜炎、髄膜炎の診断方法や治療の問題であった。WHOポリシーの原則的な点については、よく理解されているように感じられた。

3] 前回まではセミナーの資料などは非常によく整い、準備をDr.Tsogtが1人ですべてを行っているようであったが、今回は部下の何人かに分担させて準備し、運営した。部下の医師を育てることは非常に望ましいことである。

 

IV. モンゴルの現在の結核蔓延と対策の実状

1) 結核罹患率

1999年の結核罹患率は10万対133で、日本に比べると約4倍と高い。99年の新登録者では68.1%が塗抹陽性と報告されており、最近では塗抹陽性肺結核患者の比率が著しく改善しているので、診断の正確度は高いと考えられる。WHOの報告では1998年のモンゴルの塗抹陽性肺結核罹患率は10万対52.5で、日本の塗抹陽性罹患率と比較すると5.5倍であり、結核の蔓延状況は日本に比べるとかなり悪いといえよう。

 

2) 結核息者の年齢階級

1998年の新登録塗抹陽性肺結核患者の年齢構成を見ると図2のとおり、25〜34歳が33.9%を占め、15〜24歳は28.1%だったので、15〜34歳の若い患者が62.0%を占めている。わが国の患者で同様の計算をすると15〜34歳は13.1%なので、結核患者の年齢構成は著しく異なっている。実際に結核療養所、保健所を訪れた時に見た患者も殆どすべてが若年者であり、これから感染を受けた子供の患者、あるいは、化学予防投与者も多かったので、患者の多くが若年者であることは間違いなかろう。

 

 

 

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