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こうした試みを総括した文献として、(Pantazopoulos 94)、(King 97)、(Bearman 92)、(Bearman 84)、(Bearman 88)、(Bearman 96)などがある。博士論文の中にも、円柱周りの渦励振の数値シミュレーションを対象とする比較検討を行なった(Halse 97)など、優秀な考察がある。ここでは、こうした比較考察をすることは主目的ではないが、取扱う内容に関連するので、以下に概観する。

発生する可能性のある特定の状態の一つに、いわゆるロックイン振動がある。一定潮流内にある円柱からは、流速に比例した周波数で渦が発生する。柔軟構造の円柱で、渦がはく離する周波数と固有振動数の値が近い場合、振動周波数によって渦のはく離がコントロールされる。この状態は、実験でも確認されている通り、一定の入射速度範囲において発生する。ロックイン現象を最初に報告した論文に(Bishop and Hassan 64)がある。(Feng 68)では、水底に固定された分解式の円柱を使った実験により、横方向流れのロックイン現象を再現している。これ以降、この現象を解明しようとする論文が多数発表されている。(Pantazopoulos 94)では、Fengの実験と似た実験により、ロックインが発生する周波数領域において質量を増やすと、特徴的な変化が現れることを示している。(Khalak and Williamson 97)では、ロックイン発生領域では、渦のはく離周波数は完全に一定ではなく、円柱の固有振動数に調和されることが示されている。これは、固有振動数に付加される質量の影響を間接的に反映する質量比に依存する。これらは、円柱に作用する流体力のシミュレーションを複雑にする要因の一部にすぎない。

非ロックイン状態の周期性流れの中にある円柱に関しては、(Bearman、Obasaju、Graham 84)が実験に基づく経験式を提案している。(Ferrari 98)の博士論文では、潮流、波浪、およびライザー上端接続部の動きをモデル化するため、Obasajuらによる準3次元の式を実践レベルに拡張している。(Sertã 99)は、Ferrari-Bermanモデルの3次元拡張式を利用している。この方法は負荷のモデル化において当然進むべき方向であるとは思われるが、それでも非ロックイン状態にしか適応していない。

Vandiverは、(Vandiver and Li 94)で、新たな構造解析手法を使用したコンピュータプログラムSHEAR 7を開発しているが、これは渦励振の商用解析ツールとして最も利用されているようである。この他にソフトウェアとしては(LIC 94)がある。これらはどちらもモードの重ね合わせモデルを使用している。解析の最も複雑な部分である流体力のシミュレーションは、一連の経験データに基づいている。質量負荷、減衰および揚力係数は、実験結果と経験に基づいて定義される。したがって、これらによるシミュレーションの結果は、実際の物理現象と正確に一致するわけではないが、渦励振による破壊を平均的に捉えるものとなっている。SHEAR 7は、励振の原因として海流のみを考慮しているという点で限界があるが、ロックイン状態と非ロックイン状態の両方のシミュレーションが行なえる。開発者の意見では、これらの手順を適切に使用するには、経験と現象に対する知識が不可欠で、最終的な結果はユーザーの判断に左右される。

 

 

 

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