しかし、沿岸海水試料の場合、7L〜8L程度を通したところでカラムが詰まる現象や化学物質が吸着せずにリークする状態がみられるようになった。従って、再現性のある実験を行うには、5L程度の量を通すことが適当であると考えられた。
試料をカラムに通し終わったら、直ちに溶出操作を行った。溶出溶媒はこれまでも述べてきたように極性の異なる4種類、蒸留水・エタノール・エタノール/エーテル混液(1:1)・エーテルである。各々10mLを通した。溶媒を交換する間に、カラムの中が乾燥しないようにすることも重要であった。各々の溶出画分はガラス試験管に保持して、遠心式濃縮機による濃縮操作に供した。この操作では各々の溶媒で揮発性などの性質が異なるため、濃縮の度合を揃えられるように各々の溶出画分で操作時間の長さを変えたりしながら行うことが重要であった。特に、エーテルは揮発性が高く、室温に放置すると短い時間でも量が大きく減少するため、0.5mLまで濃縮できた段階で直ちに密栓をして、-20℃で保存した。
この後、結果で述べる「濃縮倍率」については、今回の研究では以下のように想定した。すなわち、「試料の最初の量が5L(5000mL)であり、化学物質が一様に混合していると仮定する。そしてこの物質が全量カラムに捕捉された後、4種類の溶媒のうちの1種類のみに全量が溶出されたと仮定すると、溶媒は最終的に0.5mLに濃縮されるから、5000mL分が0.5mLになるということで濃縮倍率は10,000倍になる」
現実的には上の仮定のようにはならない。しかし、物質が不特定であり、含まれる量も未知の段階で始める沿岸海水試料の測定では、半定量的な評価ながら上記の「濃縮倍率」のような基準を設けることが必要であろう。
そして、培養細胞の検定系に添加する場合、これらの濃縮画分を0.5%となるように加えるので、最大濃縮倍率は最終的に50倍となる。これを基にして、3倍の希釈系列を作成した。添加は5段階の希釈試料(50、16.6、5.5、1.8、0.6倍)について行った。