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もう1つは増殖速度が遅くなってしまい、同じ測定日の細胞数が溶媒を加えていない対照区よりも少なくなる、という形で現れる弱い影響である。この例はエタノールの1%添加区の結果にみられた。このように、細胞数の変化をよく観察することにより、細胞に対する化学物質の影響をきめ細かく評価できる可能性が示された。

提示の順序が逆になったが、細胞増殖に対する阻害活性を分光学的に測定する場合、細胞数の計数値と吸光度との相関を調べて検量線を書く必要がある。NRK細胞についての代表的な検量線の例を図9に示す。当然のことであるが、検量線は測定するごとに作製しなければならない。しかし、方法の項目でも述べたように、今回の研究では細胞の継代数と状態をなるべく同じすることに配慮したので、測定日ごとの違いはほとんど認められなかった。また、検量線を毎回作製することめもう1つの利点は、ある日の測定値が他の実験のものと大きく異なった場合、それはその日の実験に用いた細胞の状態や測定系の何かが正常ではないことを示すことであり、実験の精度を検証できる点である。

添加濃度を変えて細胞への影響を検討したのは、実際的な測定系として海水試料から不特定の化学物質を濃縮した画分を得た場合、培養細胞に対してどの程度の濃度になるように加えれば検出できるかの目安を得られると考えたからである。すなわち今回の研究では、物質が不特定であるばかりではなく、含まれている量も未知の状態で測定を始めることになるので、化学物質(および溶媒)の添加量が少ない、あるいは濃縮倍率が低いと検出限界以下となってしまい、評価できない可能性がある。そこで図2の写真の例でも示したように、適切な添加量や濃度で測定を行うために、濃縮画分の希釈系列を作製して各々の希釈画分を添加した。

 

 

 

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