生成物の量の算出は、Tween 20という界面活性剤を加えてすべての細胞を壊した陽性対照(細胞障害率100%と考える)の吸光度とPBSのみを加えた陰性対照(細胞障害率0%と考える)の吸光度を測定して、この差引の値を基準とし、試料の吸光度の測定値から陰性対照の値を引いたものが基準に対してどのくらいの比率になるかを評価することで行う。写真の例で見ると、エタノール溶出画分の濃縮倍率の高い液を加えたウェルが濃い紫色を呈していて障害率の高いことが分かる。各画分ともに写真の左から右に向かって3倍の希釈系列になっているので、希釈率が大きくなることに伴い化学物質が薄められることから、障害率も低くなっていることがわかる。
上述の方法に従い測定した3種類の溶出溶媒のNRK細胞に対する毒性・障害性を示した(図5)。その結果、溶出溶媒の種類ではエタノールの毒性・障害性が非常に高いことが示された。特に添加濃度10%の場合、その障害率は71.2%と高率であった。また、エタノール/エーテルの混液、エーテルでも添加濃度10%での細胞障害率は高いものであった。そしてこの障害性は濃度依存的で、添加濃度が1%と低くなると細胞障害率も大きく低下した。しかし、今回試験をした3段階の濃度の中で最も低い添加濃度0.5%であっても細胞に対する障害率は0%にはならなかった。
次に、溶出溶媒のNRK細胞の増殖に与える影響について検討した。(図6〜図8)。細胞を各ウェルに植えた日を0日目とし、その翌日に溶出溶媒を添加してこれを1日目とした。結果は細胞数で表している。LDH試験と同様に、溶出溶媒の強い影響は添加濃度10%の時に認められた。そしてこの細胞増殖に対する阻害活性の測定では影響の現れ方を2つの観点で評価できると考えられた。
その1つは、生きている細胞が最初に加えた数よりも(大きく)減少してしまう、という形で現れる強い影響である。最も顕著な例はエタノールを10%の濃度になるように加えた場合であり、5日目に生細胞は0となった。