最初に、これらの2つの検定法を利用して溶出溶媒自身の細胞に対する毒性・障害性を評価した。試験した溶出溶媒は蒸留水を除くエタノール・エタノール/エーテル混液(1:1)・エーテルの3種類の溶媒であった。添加する溶媒は最終濃度が各々10%、1%、0.5%となるように細胞の培養液あるいはリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)の中に静かに加えた。その後はプロトコールに従い、吸光度を測定した。
【実験結果および考察】
最初に、LDH試験を行ったプレートの代表例の写真を示す(図3)。この写真は3-エチルアニリンを添加した人工海水をカラムに通した後、溶出・濃縮した画分をNRK細胞の培養プレート(24ウェル)に添加して反応させたものである。きちんと手順を守って試験が行った場合、その他の化学物質でも同様に各々の画分特有の変化が認められた。
LDH試験の原理は以下の通りである。
培養細胞を用いた実験系において、毒性成分などの作用によって細胞膜が障害を受けた結果、細胞中のLDHが培養上清に漏出する。このLDHを含む上清に基質と補酵素を加えてLDHの酵素反応を誘起した時、同時に添加したニトロブルーテトラゾリウムという物質が還元されてフォルマザンという物質に変化する反応を利用している。ニトロブルーテトラゾリウムは薄い黄色を呈色しているのに対し、反応の結果生成したフォルマザンは青紫色を呈することから、視覚的にもLDHの酵素反応が起こったことが確認できる。すなわち、上清に酵素が多く存在すれば(酵素活性が高ければ)青紫色が濃くなり、逆に反応がみられなければ淡い色になるからである。そして、この青紫色の反応物の生成量は、ふつうの細胞が含む程度のLDHの場合、酵素活性の高さに比例する。従って、定量的な測定が可能となる。