従って、2つの方法を併用することによって、強い毒性と弱い毒性はより明瞭に判定できると考えられた。
平成12年度は、上記の方法を適用して、実際の海水試料の測定を行うことにした。調査対象には宮城県沿岸域の2カ所、北部の舞根湾と中部の石巻湾を選んだ。舞根湾の採水は、かき研究所舞根研究センター前の岸壁から、石巻湾の採水は、石巻工業港・大手埠頭の岸壁から行った。調査研究期間の前半は、現場の海水に適用しやすいように、実験方法に若干の改良を加えることに費やし、採水は2000年7月から行った。
具体的な研究の実行手順としては以下の通りである。
1. 微量化学物質の濃縮方法と化学物質の毒性・障害性の評価方法の確立のため、実際に濃縮などを行う前に検証しておくべき項目がある。第一に、それは化学物質を捕捉したカラムから溶出を行う時に用いる溶媒自身の細胞に対する毒性・障害性を明らかにしておくことである。今回の研究では極性を変える目的で蒸留水・エタノール・エタノール/エーテル混液(1:1)・エーテルの4種類の溶媒を用いる。このうちのエタノール・エタノール/エーテル混液(1:1)・エーテルの3種類について、添加濃度を3段階に変えながら培養細胞に添加して毒性・障害性の強さを調べる。添加濃度の問題は、濃縮した化学物質を最終的にどの程度の濃縮倍率で添加できるのかを知るための重要な問題である。
2. 平成11年度の研究で検討したカートリッジカラムヘの海水試料の添加方法、カラムからの溶出方法、そして濃縮方法、また、毒性・障害性の2つの評価方法、LDH細胞障害性試験法および細胞増殖に対する阻害活性試験法について、本年度の研究で取り扱う現場で採水した試験海水に適用しやすいように修正を加えた上で、具体的な実施方法を決定する。