1つは、細胞がその細胞膜に障害を受けて大きく傷付いたり、死んだりすると、健全な時は細胞内のみに存在する乳酸脱水素酵素(LDH)が細胞の外に漏出する性質を利用して、微量物質と細胞を反応させた後の培養上清におけるLDHの酵素活性を測定し、その酵素活性の強さから微量物質の毒性の強さを算出するものである。すなわち、毒性が強いほど多くの細胞が死に至ることになり、培養上清に漏出するLDHの量も比例して多くなると考えられる。すなわち、高い酵素活性として検出されることになる。活性の強さを基準としているため、毒性の強さを定量的に表現できる方法である。
2つめは、濃縮画分を添加してから培養を継続して、毎日の生細胞数の変化を調べる方法である。化学物質の中には、細胞を死亡させるには至らないが、何らかの悪影響を与えて増殖を阻害する種類の物質が存在する。このような種類の物質は、特に微量の場合、上記のLDH活性の測定法ではその影響が評価できない。そこで、細胞の増殖に与える化学物質の影響も調べることにした。この方法も生細胞数の変化を実際の計数値に基づいて比較するので、定量的な評価を行うことができる。
細胞の増殖を阻害する毒性は、細胞を死に至らしめる毒性とは種類が異なっていることが考えられる。あるいは同じ物質による作用であっても、量の違いによって細胞に対する影響の現れ方が異なることも考えられる。そこで、LDH活性の測定法と細胞増殖の測定法を併用することにした。当然のことながら、細胞が死ねば増殖はみられなくなるから、細胞死を導くような強い毒性の影響は、両方の測定結果に反映することになる。しかし、このような場合、細胞増殖の測定法では、生細胞数が大きく減少する、あるいは生細胞数が0になる、という形で影響が現れるため、細胞の増殖率が小さくなる、あるいは細胞は生きているが増殖しない、という形とは明確に区別できる。