図6 津軽暖流域の中に通常含まれる観測点、黒埼ラインKR3(40°00'N, 142°11'E:左図)および椿島ラインTS3(38°56'N, 141°57'E:右図)における水型の季節変化:50m層(上図)、100m層(中図)、150m層(下図)。図中の数字は表1で定義した月を示す。これらの観測点位置については図1を参照されたい。
これに対して、8〜11月の夏から初冬にかけてのKR6の水型変化は、KR3の1年を通しての季節変化に似ているが、水温の最大値はKR3よりも低くなっている。100m層での11月にかなりの高塩分の値が見られるが、これは黒潮系水の侵入(永田ら、2000)のあった年が統計の中に含まれていたと考えられる。黒潮水の影響は南方のTS8においてさらに著しく、季節変化は非常に複雑になっている。特に、50m層および100m層での8月に見られる高塩分水は、黒潮の影響と解釈するのが妥当であろう。
このような特異な統計値の解釈については、個々の事例に戻って検討する必要がある。その一例として、1980年8月の観測結果を挙げる。この時には、図8の左図に見られるように、岸沿いに顕著な津軽暖流が認められ、海域の南東部には明確な黒潮水が存在している。また、海域の北東部には、これも顕著な親潮水の浸入が見られる。この3つの特徴的なそれぞれの水塊の中にある観測点、TD3(39°32'N, 142°19'E), TS8 (38°56'N, 143°14'E), TD7 (39°32'N, 143°11'E)における水型の鉛直分布をTSダイアグラムの上に示したのが図8右である。表層水は種々短期的な変質を受けているので、50m層以深に注目する。TD3では表層を除いて、Tの領域に入っており、典型的な津軽暖流水の性質を持っている。