図4 三陸沿岸域100m層の水温(点線:℃)と塩分(実線:psu)の水平分布、1971年から1995の25年間の月平均値を示す。各図左肩のローマ数字は、表1で定義した月を示す。水塊の区分については図2を参照されたい。
2月に起こるとされている津軽暖流水と親潮水との交代を示しているのであろう。この親潮水の浸入は、3月、4月と続き、4月では南東端と北西端を除くとほぼ全域を覆っている。津軽暖流が復活する5〜6月になると親潮水の南下傾向はほとんど認められないが、夏季から秋季の7〜10月には海域の中央部142°40'E付近を南下する親潮系水が認められる。しかし、このような構造は200m層ではほとんど認められない。200m層の構造は、一般に海域の南西または南に卓越する黒潮水と、北西または北に卓越する親潮水の間に、両者の混合水・遷移水がどのように分布しているかを示していると考えられる。
このように津軽暖流の構造、南下する親潮水(親潮第一分枝)の構造は一般に浅く、200m層ではほとんど現れない。このことが、この海域での津軽暖や親潮第一分枝の動向を見るのに100m層の分布が主として論じられてきた理由であろう。
4. 水型の季節変化
上述のように、津軽暖流水は各ラインの岸よりの3測点に主として現れる。岸よりの2測点は浅く、150m以上の水深まで観測されるのは岸から3番目の測点である。最も北の黒埼ライン3番目の点KR3(40°00'N, 142°11'E)と、最も南の椿島ライン3番目の測点TS3(38°56'N, 141°57'E)での水型の季節変化を50m層、100m層、150m層について示したのが図6である。