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この変化は、33.0〜34.0psuの範囲(Tの領域だけでなく、Oの上方のS領域)で見られるから、表層津軽暖流系水の存在領域をHanawa and Mitsudera (1987)の分類に加えた方が良いかもしれない。楔型の塊に合体した分岐部の痕跡は、1〜2月の分布にも、T領域内での上方への突起のような形で残っており、3月では見られない。この海域で起こるとされている、2月の津軽暖水から親潮水への交代がこのような形であらわれているのであろう。津軽暖流系水の季節変化については、海峡からの流出水の季節変化と対応させながら、さらに詳細な検討を行うべきであろう。

 

3. 水温・塩分の水平分布の季節変化

この海域での水温の生起頻度分布が非常に歪んだ形になることは、永田ら(2000)が述べている。図3に各標準層別の頻度分布を示すが、この歪みは200〜300m層に顕著に表れている。季節別の図はここでは示さないが、季節変化が著しいの0〜100m層で、どの季節でも、平均水温は変化するが、分布型は左右対称に近い形をしている。この平均水温の季節変化に対応して図2の分布の広がりが大きくなっているが、分布型は左右対称になっている。これに対し、200〜300m層での分布形は著しく歪んでいる。150m層の分布は両者の中間の形状であり、この海域では150m層付近を境に上層と下層で海況特性が違うことを示している。図2の水型の分散図で、上方への分岐部分を構成しているのは、主として0〜100m層の範囲で測られたデータによる。そこで、上層と下層の海況の特徴的な季節変化を見るために、100m層(図4)と200m層(図5)の各月の水温・塩分の平均水平分布を見ることにする。0m、50mの分布では、多くの複雑な小規模現象が現れるのでここでは論じない。

100m層(図4)の7〜10月の期間では、岸に沿った形で水温・塩分の等値線が南北に走り、沿岸側がより高温・高塩分になっているのが認められる。これは津軽暖流の南下に伴うものであるが、その傾向は弱いながら5月から始まっており、塩分では明確ではないが水温の等値線では、12月まで持続していることが分かる。これに対して、200m層(図5)では、津軽暖流の南下流を示すような水温・塩分の分布は認められない。100m層の2月の分布図で、低温・低塩分の親潮系の水が、最南の椿島ラインを除いて、対象としている海域の東半分を覆っている。

 

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図3 三陸沿岸域での標準層別水温生起頻度分布。図の横軸下に、黒三角で平均値、白三角で(平均値±3倍の標準偏差)の値を示す。各図の中に標準層深度が示されている。

 

 

 

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