図2 各月に観測された水型の分散特性。I〜XIIは表1の定義による、1〜12月を示す。図中での領域分けは、Hamawa and Mitsudera(1987)による水塊分類で、Kは黒潮水、Tは津軽暖流水、0は親潮水、Cは沿岸親潮水、Sは表層水が、それぞれ通常分布する領域を示す。
この期間、Tの領域に見られる水は、右上がりの直線付近に見られるだけで、データ点の上述の上方への分岐状況はほとんど見られない。この時期には一般に、顕著な津軽暖流水は現れず、この海域は主として親潮水に覆われることになる。
5月に入ると、水型の分散が大きくなり、Tの領域でのデータも高温側に広がる傾向が見られ、津軽暖水の流入の影響が現れ始める。6月には明確な上方への分岐が見られるようになる。分岐部は左上方向に延びてデータの塊の密な部分の低塩分側の端は約33.0psuであり、一方高塩分側の端、Kの領域にあるデータの塊との境界は明確でないものの、K領域との境目の34.0psu程度と見ることが出来る。この分岐した水型の固まりは、7、8、9月と上方高温度側に移動していく。これは、津軽海峡から流出してくる津軽暖流水の季節変化を反映するものであるが、三陸沿岸域に達するまでの周辺水との混合や、海面を通しての熱の出入りによる変質を受けていると考えられる。9月、10月の分布では、この水型の固まりは、下方の楔型の塊からほとんど分離した形となり、表層水の性質を持っていることは注目される。9月以降には低温化が起こり、12月になると、下方の楔型の塊と合体した形となる。