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三陸沖海況の研究の発展

―大槌シンポジウムの20年―

 

三陸沿岸域海況の季節変化について

小熊幸子

鈴木亨

永田豊

渡辺秀俊

山口初代

高杉知

 

おぐまさちこ:海洋情報研究センター

すずきとおる:海洋情報研究センター

ながたゆたか:海洋情報研究センター

わたなべひでとし:三洋テクノマリン(株)

やまぐちはつよ:三洋テクノマリン(株)

たかすぎさとる:岩手県水産技術センター

 

津軽暖流の強さに著しい季節変化があることはよく知られている。また、ここでは津軽海流系の暖水と、親潮系の冷水とが季節的に置き換わり、時には侵入する黒潮系水の影響も受けている。岩手県水産技術センターの1971年から1995の25年間の沿岸観測定線資料を用いて、この海域の海況の季節変化特性を論じる。

 

1. はじめに

三陸沖沿岸域は、黒潮・親潮前線に挟まれる混合水域の西端にあたるが、岸沿いの津軽暖流の南下もあり、非常に複雑な海況を示す。津軽暖流は著しい季節変動を示し、噴火湾等の周辺海況に明確な季節変化が現れる(例えば、大谷、1981)。三陸沿岸域でも津軽暖流は夏季に強く、1〜4月にはほとんど認められない。2〜5月には、この海域は広く親潮系水に覆われる。永田ら(1993)は、冬季の表面冷却にともなって、三陸沿岸域でも噴火湾同様、北太平洋中層水に匹敵する高密度の水が生成することを指摘している。しかし、断片的な記述を除くと、三陸沿岸域の海況の季節変化について組織的に論じた論文はほとんどない。

岩手県水産技術センターでは、1963年から三陸沿岸域で継続的な海洋観測を行っている。特に図1に示した沿岸定線については、原則として月1回の割りで頻繁な観測が行われているが、冬季には、各観測線の最も沖側の測点での観測が省かれることが多い。

 

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表1 岩手県水産技術センターの観測実施期間は、暦上の月に必ずしも対応せず、月をまたがって実施されることも少なくない。しかし、この表のように12の期間を設定すれば、年12回の観測を、12の期間に含ませることが出来る。ここでは、ここで示したI〜XIIの期間をそれぞれ便宜上1〜12月と呼ぶ。

 

 

 

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