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さしあたってはこの海域ではm-2σ、m+4σを適用して見ることを考えている。もちろん、データがこの範囲外にあっても、直ちに何らかのエラーフラッグ付けようと言う訳ではない。ただ、現場の研究者に一度野帳等に戻って真偽の検討をしてもらうためである。これも現場用の晶質管理ソフトの作成を急いでいる理由の一つである。

 

4 データ分布の歪と、異常値の取り扱い

稀な現象であっても、実在する異常値をどのように取り扱うかはデータ管理上重要な問題である。この章では、データ分布の種々な特性と異常値の扱いの試みについて述べよう。図3左において、最も高温側へのデータの延びの著しい300m層について、水温値の生起頻度分布を図4に示す。上述のように低温側に明確な下限があるために、分布形状は正規分布に比べ著しく歪んでいる。図の横軸に三角印で、平均値を含み標準偏差を単位で区切ってあるが、高温側への頻度の減少は緩やかで、標準偏差の9倍を越す値まで連続的に延びていることが分かる。このような場合には、分布の歪度を考慮して論理的な閾値を考案することが可能であるが、表層部では分布形状がかなり違ってくるし、季節変化も大きく一般法則を求めるにはなお検討を要する。

データの分布が非常に歪んでいる一例を図5に示す。これは、図に示すように紀伊半島の南東沖の海域で得られた水温の生起分布であるが、明確な三つのピークが現れている。一番右(高温側)のピークは黒潮大蛇行時のデータに対応しており、潮岬沖では黒潮は岸を大きく離れるが、暖水が大冷水塊の縁を回って東方からこの海域にもたらされるため、かえって高温になる。黒潮の直進時には、この海域はいわば潮岬の陰になって顕著な黒潮水の侵入がなく、やや低めの2番めの水温ピークを構成する。

 

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Fig.4 Occurrence frequencies of temperature value at 300m depth (see Fig.3).

 

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Fig.5 Occurrence frequencies of temperature value in region shown in the map (upper figure).

 

 

 

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