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このワークショップでは、種々の海洋データ管理の問題が議論されたが、その中に、幾つかの国で、データセンターが海洋データのユーザーの拡大するニーズに答えきれなくなってきているという問題が含まれていた。特に、ユーザーの目的に応じた専門的データや情報のプロダクトの提供はほとんどなされておらず、また海洋学社会から提供されるデータ量の著しい増加は、データセンターによっては、その取扱に困難を生じさせている。このことに加えて、データの品質チェックのような重要な問題や、重要であるのにIODE関連センターには集められずに失われてしまいそうなデータの救済の問題への対処は、十分には行われていないのが現状である。

1つにはこのワークショップの成果として、また高度の海洋データプロダクトやサービスの向上の日本における必要性に基づいて、日本水路協会は、日本財団の援助の下で、海洋情報研究センター(MIRC)を東京に設立した。MIRCは、上に述べたワークショップで議論された海洋データ管理能力上の不備を克服するために、また手法の開発や高度のデータセット作成を通して海洋データ管理の概念そのものを改良し増進させるために、設立されたのである。

この目的は、海洋データ情報に関する改良された情報技術と能力の発展をサポートする専門的センターとしてのMIRCの設立によって、成功裏に成し遂げられつつある。MIRCは、その努力によって、日本だけでなく国際的な海洋データ社会を支えてきた。日本財団の豊富な資金援助と、海洋学および情報技術に経験をもつ専門的スタッフによる熟練チームを要することによって、この数年間MIRCは海洋に焦点を当てた情報技術の最前線となった。この優れた仕事に加えて、MIRCは情報技術を増進させ、その技術を日本の海洋データに適用して、JODCを助けてその保有するデータの品質を顕著に向上させた。そのために、MIRCは進歩した科学的な原理を用い、また合理的な新しく開発した品質チェックと解析の技術を発展させた。

MIRCは、高度に洗練された海洋データの品質管理ソフトウェアを開発し、このソフトウェアは天津の中国海洋データセンター、ウラジオストックの太平洋海洋研究所、ナチャンとハノイのベトナム海洋データセンター、マニラのフィリピン海洋データセンター、フィリピン大学などでも使われている。この地域における品質管理技術の提供というMIRC活動の利点の1つは、単一のツールの使用によるデータプロッセシングの標準化であろう。海洋データプロセッシングの面での標準の欠如は、IODE社会での1つの大きな関心事である。この観点においても、MIRCの努力は、プロッセシングの標準的方法の導入を大いに助けるものである。

このことに加えて、MIRCの研究者は、オーストラリアを初めとして、多くの国を訪問しており、開発したソフトウェアのデモンストレーションを行い、科学者にMIRCの活動の紹介を行い、海洋データ管理に関する数多くの発表をしてきた。このことを通して、MIRCはWESTPAC地域において、IODEプログラムの理解の増進を成功裏に行い、効果的な海洋データ管理の重要性についての知識と理解を深めてきた。

 

 

 

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