高度のデータ利用者は大学関係を初めとする「研究者」である場合が多い。したがって、ユーザーのニーズを正確に把握するためには、データ・データプロダクトの提供者も必然的に「研究者」でなければならない。われわれとしては、データセット、アトラスのようなデータプロダクト、データ管理のためのソフトウェア等、いずれの場合も「最初のユーザー」はMIRC自身であるべきだと考えている。ユーザーおよびオリジネーターの重視と相互協力、これが第1のMIRCの姿勢である。
世界における海洋データの多くは、データ管理を技術的なものとして捉え、自分達を技術者集団とみなしているように思われる。高度の海洋データ管理を実行するには、対象とする海洋の構造、海洋の特性を十分に把握しなければならないのは、われわれが研究した三陸沖を対象とした高度品質管理方式の樹立の場合を見ても明らかである。常に、最も根源的な「海洋現象」に立ち返ることが、データ管理の実施においても、本質的であるとわれわれは考えている。
もちろん、狭い海洋データの管理問題に限っても、データの特質を究明する必要は常に存在する。われわれはデータ管理そのものが、優れて研究的業務でなければならないと考えているが、上記に述べた研究的アプローチは、直接的にこのことにも結びついていると考えられる。
このような研究的アプローチをデータ管理問題に結び付けて考えている数少ない「データ管理者」の1人が米国NODCのSydney Levitus博士である。MIRCの以上のような基本的姿勢が、彼に受け入れられているのは、ある意味では当然であるのかもしれない。われわれは、このような基本姿勢をとりつづける限り、世界でのリーダーシップを取ることができると考えている。
資料(MIRC News Letter No.8 より)
MIRCの活動について ―IODE議長の立場から―
IODE/UNESCO議長、ベン・サール
ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)の国際海洋データ情報交換システム(IODE)は30年以上の期間にわたって、海洋データの管理と交換についての方向付けと調整の仕事をしてきている。このほとんどの期間において、IODEプログラムは各国の国立海洋データセンター(NODC)またはそれに代わるIODE対応機関によって運用されてきており、国家レベルの活動に限定されてきた。しかし、最近の5〜6年においては、プログラムの運用をもっと開かれたものにする試みがなされ、伝統的なNODCネットワークの外にある機関をも包含するようになってきた。この考え方は、2000年11月にリスボンで開催されたIODE委員会の第16回総会で、強力な支持を受けた。このような変化をおこす触媒の作用をしたものの1つが、日本での最近の海洋データ管理の発展における著しい成功である。
1996年、世界中から代表的な海洋データ管理者が、日本水路協会が主催して海上保安庁水路部で開かれた海洋データ管理ワークショップに招かれた(このワークショップは日本財団の援助による)。