上に述べたように、MIRCでは普及啓蒙活動を国際的なベースでも実施してきているが、国内でも年1〜2回の割合で海洋データシンポジウムを開催している。いずれの場合にも、ほぼ満席となる盛況で、非常な成功を収めたと考えている。このシンポジウムの内容は、一般啓蒙図書としてMIRCサイエンス・シリーズとして刊行してきている。刊行物としては、この他に「海洋利用の手引き」等がある。
MIRCの研究開発成果は、一部データプロダクトの形で製品化しつつある。これは、5年経過後のMIRC自立の柱の1つとして位置付けているが、この面での努力はまだ十分なものとは言えない。しかし、製品プロダクト・リストはかなり充実したものとなりつつあり、日本海洋学会の大会時などで、MIRCプロダクトの紹介に勤めており、MIRCの業務や製品の知名度はかなり浸透しつつあると考えている。この点についての努力を残された「海洋データ研究」の期間において、拡大していかなければをらないと考えている。
IV. 研究業績
すでに研究開発成果の部分で述べてきたように、MIRCはデータ管理に関する技術的機関であるだけでなく、その名の示すように「研究」機関である。このことは、すでに発表または印刷中の論文が、現在までに22編に達しており、国内外の学会等での研究発表は毎年20編を越していることにも表れている。MIRCの研究スタッフの数から言って、これほど多くの研究成果を上げている研究機関は、余りないであろう。われわれとしては、研究機関としての高い評価を受けることが、今後のMIRCの活動においても大きな支えとなるものと信じて今後も研究活動を継続していきたいと考えている。
V. MIRCの活動の基本的な姿勢 −総括に代えて―
MIRCが他の海洋データ管理機関と大きく異なることは、研究面にも重点をおいていることにあるのであるが、このことはデータ管理の面でも重要なことである。
MIRCの開発した品質管理ソフトウェアは、もちろんJODCやMIRCのようなデータ管理機関自身にとっても有用なものである。しかし、その主要な目的は、データの第一次取得者である現場の試験・研究機関でも容易に使えるものとして、オリジネーター・フレンドリイなものとすることである。これによって、JODC/MIRCに流入してくるデータの質の向上が図れるわけである。しかしこのことは決して容易なことではない。それを実行するためには、現場機関の実状を十分に把握し、エラーの生じる場所、原因を研究調査する必要がある。われわれは水温・塩分データに関しては、このことを和歌山県水産試験場と岩手県水産技術センターとの共同作業として行ったが、このためには相互の人間的な信頼感が不可欠である。オリジネーター・フレンドリイであるためには、オリジネーターとの相互作用が必要である。このことは、データあるいはデータプロダクトのユーザーについても同様である。