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水深がこの中間の場合は、中央のやや複雑な関係式をそのまま用いて表現する必要がある。このように波浪の場合は、波長のスケールが小さいために、様々な状態を取り得るのである。ここで強調しておきたいのは、これらの波は結局のところ「外部重力波」として統一的に解釈できるということである。その意味では、波浪・高潮・津波と言っても発生要因などの分類を考えなければ、同じものであると言える。

以下では、浅海域において波浪の受ける海底地形の影響について見ていこう。浅海域で波浪が受ける影響としては、主なものとして海底摩擦、屈折・回折などの変形がある。

海底摩擦は、浅い地点ほど強く働き波浪を減衰させる。図7は、一定水深の海域に、20m/sの風を吹かせた時の波の発達を示したものである。波浪は、風の吹いている距離(吹送距離という)が大きくなるほど、また、吹続時間(風が吹きつづける時間)が長くなるほど発達する傾向を示す。しかし、いずれの場合も、水深が浅くなるほど波の発達が抑えられることが分かる。

 

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図7 20m/sの風を吹かせた時の水深による波浪の発達の違い(海底摩擦の影響)

a:吹送距離による発達、b:吹続時間による発達。

 

これを実際の海に当てはめると、例えば八代海では、浅海効果を考慮した場合と考慮しない場合では、水深の浅くなる北部の波高の発達に差異が生じる。浅海効果を考慮すると、海底摩擦のために、波高があまり発達しない。

では、水深の浅い沿岸部では、海底摩擦の効果によって波は高くならないから安全か、というとそうとは限らない。浅海域では、波のエネルギーは水深の平方根に比例して進むから、水深の浅いところではその速度が遅くなる。このような時には、その進行方向が屈折により変化し、水深の浅い部分に波のエネルギーが集積し、高波を生ずる場合もある。屈折のイメージを図8に示す。

 

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図8 波浪に対する屈折の効果のイメージ

海底地形により波の集中・分散が生じる。点線は海底の等深線、一点鎖線は波向きを表すなお、実線は波の位相を表している。

 

実際にこのような高波によって、災害が起こっている。1990年10月24日の北海道松前半島の知内町で高波により60戸が浸水したほか、函館市の漁港ではクレーンが倒壊するなどの災害が起きた。

 

 

 

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