図6 水深を変化させた場合の八代海の高潮(1999年9月24日6時)
a:水深を全て39m(平均水深)にした場合(その他は図5と同じ)、
b:水深を全て7mにした場合(その他は図5と同じ)。
海底地形と波浪の関係
波浪は、風によって起こされる海面付近の変動である。外洋を遠く伝播してくるうねりもこれに含まれる。大抵の人は、海岸線で砕ける波を見ているであろうから、比較的なじみも深いものと思う。波浪は、短い波であるからその影響は海面付近に限られており、水深が100mを越えてしまうとほとんど海底地形の影響を受けない。しかしながら、沿岸部に近づいたりして水深が数10mから数m程度と浅くなると、海底地形の影響を受けるようになる。少し複雑な関係式であるが、表2に海の波(重力波)の主な関係式をまとめておく。位相速度は、波形(山と谷)の進行する速度、群速度は波のエネルギーの進む速度であるが、ここでは深く立ち入らない。
中央の式が、線形理論から導かれる関係式であり、左側が水深を大きくした場合の近似式、右側が水深を浅くした場合の近似式である。普通の外洋域においては、波浪の関係式は左の式で表されるが、水深が浅くなると右の関係式で表現されるようになる。この右側の式は、実は高潮や津波を表現する式そのものである。すなわち、それぞれの現象を記述する関係式は、本来理論的に導かれた中央の式で統一的に表現され、実用的にその近似式が用いられているに過ぎない。実用的といっても、深水波の近似式は、水深が波長の半分より大きい場合に、浅水波の近似式は、水深が波長の25分の1より浅い場合には、ほとんど真の値と等しくなる。