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図5に数値計算による9月24日3時から8時までの毎時の高潮偏差分布を示す。3時には、東よりの風に吹寄せられて海水は八代海北西部に集まっており、正の偏差になっている。一方、八代海東岸の八代市などでは負の偏差になっている。風が南から南西に変化する4時から5時の間に、この北西部に集まった海水が東部へ戻り、南から吹き寄せられてきた海水が北東部に集まるため、八代海北部の偏差が高まってくる。強い南西風が吹き続いた6時頃には、八代海北部の湾奥で最も高い偏差を示す。計算では、北部の高潮偏差は340cmを越え350cm近くまで達した。この値は、日本で最も高い伊勢湾台風時の名古屋の記録(検潮所で3.5mを観測)と比べてみれば、十分高いものであったことが分かる。

なお、図中の矢印は鉛直平均した流れを示しているが、八代海を南下する反流や6時ころに卓越する八代海中部の循環等が見られる。これは八代海の副振動によるものである。八代海には周期約140分の固有振動が存在することが分かっており、この振動によく対応している。

 

Storm Surge

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図5 1999年の台風第18号による八代海の高潮

1999年9月24日3時〜8時の毎時の時系列。矢印は、鉛直平均した流れのベクトル

 

3. 八代海の高潮と海底地形との関係

八代海の高潮を例にして、海底地形の影響をもう少し調べてみよう。数値計算では、海底地形を仮想的に変化させて、その影響を評価することも容易に可能である。そこで、この海域を一律に、八代海の平均水深(39m)にした場合と、偏差の大きかった八代海北部の代表的な水深(7m)にした場合の計算結果を図6a、bに示す。

 

 

 

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