日本財団 図書館


その結果を図12に示す。津波浸水高さのピークの位置、浸水高さの中心位置、津波高さの絶対値などが全く実測浸水高さの分布とは一致していない。

 

017-1.gif

図12 オーストラリア海軍発行海図に基づいて計算した、津波高さ分布(Matsuyama et al.: 1999)

 

1999年1月、海洋科学技術センター(JAMSTEC、横須賀市)の観測船・「かいれい」によってビーム反射式センサーによるSissano潟湖沖の海底地形図の作成航海が行われ、筆者もこの航海に参加した。わずか1週間ほどの航海で、ほぼ四国に匹敵する面積の海域の正確かつ詳細な海底地形図が得られた。その細かさは、ほぼ20万分の1の地形図に匹敵する。

この観測によって、Sissano潟湖の真正面、海岸から20km付近に、「円形劇場」と呼ばれるようになった、半月状の急斜面地形と、その沖側に円形劇場に対峙するように「ポップ・アップ丘」と呼ばれる火山丘の地形が解明された。さらに、その後同年内に行われた同センター所属の観測船「なつしま」による2度の海底観察によって、この円形劇場からポップアップ火山丘にかけて、地震による震動によって生じたと考えられる深い亀裂や、中小規模の地滑り地形が観察された。

津波発生の直接原因については、地震に伴う地殻変動か、大規模地滑りかという点でまだ議論の余地があるが、「円形劇場―ポップアップ火山丘」の範囲内で起きたことは間違いない。

いくつかの不明の点はあっても、ポップアップ丘の何面の急斜面に沿って地震によって滑った断層面があるとして、津波の数値計算を行ってみた。図13は同丘の南斜面の位置に断層があると仮定して数値計算を行ったものである。同図下は海岸線上での津波の高さの分布の計算結果である。ご覧の通り、Sissano潟湖の東側砂州の上でのピークと、Malol集落西方の第2のピークがきわめて顕著に現れている。

 

017-2.gif

図13 Sissano沖海底火山丘(Pop-up hill)の南斜面付近の断層の滑りによって津波が起きたとしたときの沿岸での津波高の分布。Sissano潟湖の東側砂州の上に現れた第1ピーク、およびMolol付近に現れた第2ピークの位置がよく実測値に対応している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION