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すなわち、初松前の地点は、津波の波源が多少違っていても津波エネルギーが集中しやすい「津波特異点」なのである。この津波特異点は、海底地形情報によって予測可能なものであった。この例のように正確な海底地形情報があれば、津波特異点の存在は予測しうるのである。

 

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図7 奥尻島南方海域に津波は入射してきた場合の波の伝播線。 上から真北から66度東、76度東、90度東(真東)方向に入射してきた3つのケースを示す。 どの場合も初松前付近に焦点を結んでいることに注意.

 

4. 北海道本土の尾花岬、および茂津多岬の津波特異点

北海道南西地震による津波によって大きな被害を生じたという報道に接した後約1ヶ月以内に、奥尻島と北海道南西部の集落ごとの津波の浸水高さの調査を実施し(都司ら、1994)、図2のような高さの分布図が得られた。その後、余震観測の結果を参考として、図3に示すような2枚の断層滑り面を仮定し津波伝播の数値計算を実施した。図8は、1分ごとの津波の伝播線であるが、瀬棚町須築(すっき)の約1km北方の茂津多岬付近には地震発生後約4分で早くも津波第1波が到達する。

伝播図をよくみると、津波はこの岬に向かってエネルギーが収束する傾向が見られる。さらに大成町太田と北檜山町との間の丸くはらみだした海岸線をなす尾花岬にも、津波の伝播線は収束する傾向をもっていることが見てとれる。

数値計算による津波の浸水高さの計算結果を図9の折れ線として示す。

 

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図8 北海道南西沖地震発生後、1分ごとの津波の伝播

 

 

 

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